スタートアップ企業とは?ベンチャー企業・起業家との違いや特徴など徹底解説
登録日:2017.10.30 | 最終更新日:2019.10.22
エンジェル投資家やVCなどから、投資先として注目されている「スタートアップ企業」。もしあなたが外部からの投資によって資金調達を目指しているのであれば、スタートアップ企業に関する基礎知識は欠かせません。
スタートアップに似た言葉としては、「ベンチャー企業」や「起業家」などが挙げられます。しかし、実はこれらの言葉はいずれも異なる意味合いであり、スタートアップ企業を目指すのであれば違いをきちんと理解しておくべきです。
そこで今回は数々の中小企業の相談に乗ってきた、現役17年の税理士がスタートアップの基礎知識を解説します。この記事を最後まで読めば、あなたの独立・開業の幅は一気に広がります。
■スタートアップ企業とは?定義はある?
実は「スタートアップ」という言葉には、明確な定義はありません。元々はIT企業が集中している米国シリコンバレーで使用され始めた言葉であり、アメリカでは収益モデルや組織、成長スピードなどに特徴が見られる企業を表す言葉として用いられています。
ここで注意が必要なのは、会社規模や設立年数は特に関係ないこと。一般的には設立から3年以内の企業に対して使われる言葉ですが、スタートアップは企業形態を示す言葉ではないのです。
このスタートアップは、現在では日本でも使用される言葉になっています。しかし、日本においては本来の意味が浸透しておらず、ベンチャー企業や起業と同じような意味合いで使用されることもあります。
この説明だけではイメージしづらいので、次からはスタートアップ企業の特徴やベンチャー企業などとの違いについて詳しく解説していきましょう。
■スタートアップ企業の6つの特徴
まずは、スタートアップ企業に見られる特徴をご紹介していきます。下記で挙げる特徴に該当する企業は、スタートアップ企業として投資先に選ばれる可能性があるでしょう。
【1】成長スピードが速い |
【2】ビジネスに斬新性がある |
【3】イノベーションを意識している |
【4】社会貢献につながる事業を展開している |
【5】出口戦略(EXIT)を検討している |
【6】構成メンバーが比較的若い |
【特徴その1】成長スピードが速い
スタートアップ企業のメンバーは、基本的に短期間での成長を目指しています。具体的な期間は企業ごとに異なりますが、立ち上げから数年間で成功を収めるケースも少なくありません。
しかし、急激な成長を目指すとなると、壁として立ちはだかるものが資金調達です。実績の少ない企業は金融機関からの信用を得にくいので、スタートアップ企業の資金調達手段は限られます。
そこで心強い存在となるのが、エンジェル投資家やVC。例えばビジネスプランの質が高いスタートアップ企業は、シード期・アーリー期(起業前・起業直後)にエンジェル投資家やVCから投資を受けて、その資金で事業展開を目指しています。
【特徴その2】ビジネスに斬新性がある
世の中に新しいモノ・技術を提供している点も、スタートアップ企業の大きな特徴です。スタートアップ企業のほとんどは、既存のビジネスではなく斬新性のあるビジネスを展開しています。
そのため、スタートアップ企業と呼ばれる会社の多くはIT系であり、日々「世の中に新しい価値を生み出すこと」を目指しています。
【特徴その3】イノベーションを意識している
これは【特徴その2】にも関連しますが、スタートアップ企業のほとんどはイノベーションを意識しています。この「イノベーション」という言葉は、スタートアップ企業にとって非常に重要なワードであり、VCなどの投資側がイノベーションの実現を期待して投資をするケースも珍しくありません。
【特徴その4】社会貢献につながる事業を展開している
スタートアップ企業が生み出す商品・サービスは、世の中の役に立つモノが多い傾向にあります。例えば、人々の生活を便利にする機器、これまでの常識を覆す効率的なIT技術などが挙げられるでしょう。
そのため、スタートアップ企業は社会に貢献しているケースが多く、中には利益より社会貢献を優先する企業も見られます。
【特徴その5】出口戦略(EXIT)を検討している
出口戦略は「イグジット」とも呼ばれており、可能な限り利益を残す形で事業から撤退する行動を指します。会社や事業を売却する「M&A」をイメージすると分かりやすいでしょう。
スタートアップ企業の創業メンバーは、この出口戦略を強く意識しています。つまり、長期間経営を安定させることは目指しておらず、短期間のうちに最大限の成長を遂げて、ピーク時に撤退することを目指すケースが多くなっています。
【特徴その6】構成メンバーが比較的若い
スタートアップ企業は、その組織構成にも特徴が見られます。20代~30代の比較的若いメンバーが多く、基本的には少人数で事業を進めていきます。
創業メンバーは「ファウンダー」と呼ばれており、このファウンダーと従業員は「チーム」と呼ばれます。チームを組めばある程度事業は進められるので、実は準備が整うまで法人登記をしないケースも珍しくありません。
この組織構成には、効率的に事業計画や資金調達を進めやすいというメリットがありますが、逆に「長期間の経営には適していない」というデメリットも存在します。そのため、スタートアップ企業の多くは人材育成などには力を入れておらず、短期間での成長&出口戦略を狙っているのです。
■スタートアップ企業とベンチャー企業の違いを徹底解説!
上記ではスタートアップ企業の特徴を解説しましたが、ではベンチャー企業とは具体的にどのような点が異なるのでしょうか?この2つは特に混同しやすい言葉なので、違いを理解してきちんと区別して覚えましょう。
【違いその1】ビジネスモデルの作り方
前述で解説した通り、スタートアップ企業は新しいビジネスモデルの確立を目指します。そのため、既存のビジネスモデルを参考に事業計画を考えるケースは少ない傾向にあります。
それに対して、日本のベンチャー企業は既存のビジネスモデルを参考に、事業計画を考えるケースが見られます。つまり、ビジネスモデルの斬新性やイノベーションについては、スタートアップ企業のほうが強く意識していると言えるでしょう。
【違いその2】収益モデルの有無
スタートアップ企業に関しては、収益モデルを確立しないまま起業するケースも珍しくありません。VCなどからサポートを受け、事業を進めながら少しずつ収益モデルを確立していくケースが比較的多く見られます。
対して日本のベンチャー企業は、ある程度の利益がなければそもそも経営を存続できません。そのため、ベンチャー企業の多くは収益モデルをある程度確立した状態で経営を行っています。
【違いその3】イノベーションと社会貢献への意識
前述の通り、スタートアップ企業はイノベーション・社会貢献を強く意識しています。取り組む事業がイノベーション・社会貢献につながらなければ、日本においてもスタートアップ企業とは基本的に呼ばれません。
対してベンチャー企業の中には、イノベーション・社会貢献とは関連性が薄い事業に取り組んでいる企業も多く見られます。
【違いその4】成長スピード・出口戦略の意識
ベンチャー企業の中には将来的に株式公開(IPO)をして、会社を長く存続させることを目標にしている企業も見られます。そのような会社は時間をかけてじっくりと成長する傾向にあるので、スタートアップ企業に比べると成長スピードは遅いと言えるでしょう。
また、スタートアップ企業は出口戦略ありきで計画を進めますが、ベンチャー企業は必ずしもそうではありません。
■スタートアップ企業・ベンチャー企業の具体例をご紹介!
上記の4つが主な違いとなりますが、実はスタートアップ企業やベンチャー企業の定義(捉え方)は時代によって変わってきます。そのため、「少しイメージが湧きにくい…」と感じる方もいることでしょう。
そこで以下では、スタートアップ企業・ベンチャー企業のイメージに近い具体例を挙げてみました。
○スタートアップ企業
【その1】リバーフィールド株式会社
東京工業大学の研究をもとに、医療ロボットを開発したスタートアップ企業。東レエンジニアリングなどから8億円の投資を受け、内視鏡操作システムや手術支援ロボットなどを開発しました。
【その2】株式会社チャレナジー
「マグナス力」による発電を研究し、プロペラのない風力発電を開発したスタートアップ企業。強風でも発電できる「垂直軸型マグナス風力発電機」の開発資金は、クラウドファンディングなどで集めました。
【その3】株式会社アストロケール
小型衛星などの宇宙ゴミを、特殊粘着剤で捕獲する技術を確立したスタートアップ企業です。開発資金については、エンジェル投資家などから約48億円を集めることに成功。
○ベンチャー企業
【その1】グリー株式会社
ゲーム事業をはじめヘルスケア事業や広告事業など、インターネットに関するさまざまな事業を展開しているベンチャー企業。2008年12月には東証1部に上場しており、2016年時点で従業員数は1,500人を超えています。
【その2】株式会社クラウドワークス
日本最大級のクラウドソーシングを運営しているベンチャー企業。2015年時点で従業員数は約100人と多くないものの、2014年には東証マザーズへの上場を果たしました。
【その3】株式会社インタースペース
広告事業やメディア事業など、インターネット関連の事業を展開しているベンチャー企業。特にアフィリエイトサービスに力を入れており、2006年には東証マザーズへ上場しています。
上記の具体例を見て分かる通り、ベンチャー企業に関しては必ずしもニッチな企業であるとは限りません。実際に上場を果たしているベンチャー企業は多く見られ、現在では大企業と呼ばれるベンチャー企業も存在しています。
■スタートアップ企業と起業家の違いを徹底解説!
ここまでを読んで、スタートアップ企業とベンチャー企業の違いはお分かり頂けたことでしょう。では、スタートアップ企業と起業家は何が異なるのでしょうか?
スタートアップと起業も同じような意味合いで使用されるケースが多いので、違いをきちんと理解しておきましょう。
【違いその1】起業を果たしているかどうか
前述の通り、スタートアップ企業の中には起業前のチームも見られます。イノベーションの実現へ向けて、チームを編成し準備を進めていれば、スタートアップ企業として投資を受けることも可能です。
一方、「起業家」は実際に起業を果たした者を指すので、すでに法人などを設立した状態となります。
【違いその2】事業内容
日本においては、イノベーションや社会貢献などにつながる事業、新しい分野の事業などに取り組まなければ、スタートアップ企業と呼ばれることはありません。一方、起業家は実際に起業を果たしていれば、事業内容に関わらず「起業家」と呼ばれています。
つまり、スタートアップ企業の経営者は起業家の一種と言えるでしょう。
【違いその3】成長スピード
起業家の中には、10年~20年以上の長い時間をかけて、じっくりと成長することを目的にしている方も多く見られます。一方、スタートアップ企業は数ヶ月~数年での成長・出口戦略を意識しているため、スタートアップ企業と起業家は成長スピードの面でも大きく異なります。
以下は、スタートアップ企業・ベンチャー企業・起業家の違いを簡単にまとめた表です。これまで意味を混同していた方は、これを機会にきちんと区別して覚えましょう。
スタートアップ企業 | ベンチャー企業 | 起業家 | |
・事業内容 | イノベーションや社会貢献に関するもの | 革新的なアイデアや技術に関するものが多い | 特に定義はされていない |
・成長スピード | 短期間 | 企業ごとに異なる | 企業ごとに異なる |
・収益モデル | 確立していない企業も多い | 確立してから起業するケースが多い | 確立してから起業するケースが多い |
・メンバーの構成 | 即戦力の人材のみで構成される | 当初は少人数で構成されるケースが多い | 未経験者を雇い、教育するケースも多い |
・会社の段階 | 起業前~起業直後 | 起業後 | 起業後 |
■人材選びも重要!スタートアップ企業に求められる3つの人材
スタートアップ企業は一般的な企業とは異なる特徴を持っているので、求められる人材も大きく変わってきます。そこで以下では、スタートアップ企業に必要な人材について簡単に解説していきましょう。
【求められる人材その1】即戦力になる人材
スタートアップ企業が、成長までに費やせる時間は限られています。事業を進めることに全力を注ぐ必要があるので、スタートアップ企業では人材育成に注力する余裕がありません。
したがって、ほとんどのスタートアップ企業では即戦力になる人材が求められます。
【求められる人材その2】情報収集が得意な人材
イノベーションを形にするには、常に最新の情報・ノウハウを収集しなくてはなりません。そのため、スタートアップ企業では情報収集が得意な人材が重宝される傾向にあります。
また、収集した情報をもとに適切な判断を下せる人材、効率的な計画を立てられる人材なども求められるでしょう。
【求められる人材その3】逆境に強い人材
イノベーションを形にすることは容易ではないので、スタートアップ企業の多くはさまざまな壁にぶつかります。また、経営が安定しにくいという観点からも、逆境に強い人材はほとんどの企業で必要になるでしょう。
■まとめ
いかがでしたでしょうか?
スタートアップ企業・ベンチャー企業・起業家はいずれも似た言葉ですが、細かく見るとさまざまな違いがあります。どの道を目指すのかによってビジネスプランも変わってくるので、ビジネス用語の意味をきちんと理解して計画を立てるようにしましょう。
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