エンジェル投資で節税はできる?節税効果や手続きの流れも解説
登録日:2023.8.1 | 最終更新日:2023.8.17
投資家として活躍している方の中には、「エンジェル投資による節税」について興味を持っている方も多いのではないでしょうか。
起業したての会社に出資を行う「エンジェル投資」は、大きな利益を生む可能性のある注目の投資手法です。加えて、エンジェル投資を行うことにより、資産運用だけでなく節税効果が得られる場合があります。
エンジェル投資に関連して適用される、税制面での優遇制度がエンジェル税制です。今回は、エンジェル税制の内容やその節税効果について解説します。
また、エンジェル税制が適用される対象企業の探し方や、おすすめのマッチングサイトについても紹介します。
エンジェル投資を検討している方は、ぜひ節税面の優遇も受け取ってください。
下記の記事では、エンジェル投資の仕組みを詳しく解説しているので、まずはエンジェル投資について知りたい方はこちらもご覧ください。
エンジェル投資は節税になるのか
エンジェル投資が節税になる理由は、エンジェル税制と呼ばれる制度のためです。
エンジェル税制とは、経済産業省が制定した制度で、一定の要件をクリアしたエンジェル投資家に適用される税制面の優遇措置です。エンジェル投資と同時に、エンジェル税制が適用されれば、投資による資産運用成果と節税効果の両面で利潤を得られる可能性があります。
今後エンジェル投資の実施を予定している方は、投資成果に加え節税効果も考慮し、資産運用を検討してはいかがでしょうか。
エンジェル税制をわかりやすく説明
エンジェル税制について、具体的に解説します。
エンジェル投資すべてに無条件で適用されるわけではなく、一定の要件をクリアする必要があります。エンジェル税制についての理解が不十分な場合、期待していた節税効果を得られない恐れがあるため、注意が必要です。
エンジェル税制の仕組みについてわかりやすく解説しますので、ぜひ投資実施前に参考にしてください。
優遇措置Aと優遇措置B
エンジェル税制は、大きく分けて「優遇措置A」と「優遇措置B」があります。
Aは、出資額から2,000円差し引いた金額が、総所得金額から控除されます。控除対象となる投資額の上限は、以下のうち額が低い方です。
- 総所得金額×40%
- 1,000万円
Bは、出資額全額がその他の株式譲渡益から控除されます。投資額の上限設定がないため、高額の出資をする場合にはBの方が大きな節税効果を得られる可能性があります。
A・Bそれぞれ、適用される要件として以下が設定されています。
- (A) 設立5年未満の中小企業であること
- (B) 設立10年未満の中小企業であること
- (A・B共通) 各経過年数の規定を満たしている
各経過年数の規定においては、創業年度ごとに研究・新規事業活動に従事する社員数や、研究開発費の設定がされています。
A・Bは、どちらか一方を選択して適用される形式です。どちらの方が税金負担の面で有利になるか、試算してから選択する必要があります。
その他の適用要件
エンジェル税制は、前述の優遇措置A・Bそれぞれの適用要件以外にも、別の要件が設定されています。
前述の要件に加え、以下の3つの要件をクリアしている企業への出資でなければ、税制面の優遇が受けられません。
- 「特定の株主グループ」以外の外部からの出資が、6分の1を超過していること
- 資本金1億円超の大規模法人または大規模法人の子会社など、特殊な関係を持つ企業に属さないこと
- 未登録・未上場企業であり、風俗営業等を行わないこと
エンジェル税制の対象かどうかを確認したい場合は、中小企業庁がインターネット上で提供している事前確認制度を活用しましょう。無料で利用可能なため、申し込み前に確認しましょう。
エンジェル投資家の要件
エンジェル税制が適用されるためには、出資する側であるエンジェル投資家にも条件が課せられています。
エンジェル投資家側の要件としては、以下の2項目の設定があります。
- 金銭の振り込みによって企業の株式を取得していること
- 出資先企業が同族会社の場合、規定の株主グループに属していないこと
出資先の株式を取得する対価として、金銭の支払いが必要です。別の株式の譲渡や現物投資は対象外となります。
また、出資先が同族会社の場合には、規定の株主グループに属していると税制優遇は受けられません。同族会社とは、当該会社の株主のうち上位3位までで、当該株式の50%以上を保有している会社を指します。
エンジェル税制の節税効果
続いて、エンジェル税制が適用された場合の効果について、具体的に解説します。
また、エンジェル税制により得られる税制上の優遇金額を簡単に算出できる、シミュレーション機能についても紹介します。
投資を実施する前に、エンジェル税制で得られる優遇について十分に理解しておきましょう。
投資した年に受けられる節税効果
エンジェル税制で税制面での優遇が受けられるタイミングは、何度かあります。そのうち、エンジェル投資を実施した年度に受けられる節税効果には、どのようなものがあるでしょうか。
前述したように、エンジェル税制は優遇措置AとBどちらかの選択制ですが、いずれの場合でも投資を実施した年度に税制面での優遇が受けられます。
具体的にどれほどの節税効果があるか、以下の例で試算します。
- 出資額:500万円
- 出資年度の総所得額:800万円
- 他の株式の譲渡益:150万円
優遇措置Aの場合は、800万円×40%-2,000円=319万8,000円が総所得から控除可能です。
一方、優遇措置Bの場合は、出資額が他の株式の譲渡益を超過しているため、譲渡益全額の150万円が総所得から控除できます。
売却時に損失が発生した際に受けられる節税効果
エンジェル税制では、当該株式を売却して損失が発生した年度でも節税効果が得られます。
エンジェル投資は、成功して利益を得られるとは限らず、損失を発生させてしまうケースも多いです。あらかじめ、損失発生時の節税についても理解しておくと良いでしょう。
前述の例において、株式を100万円で売却したケースを想定します。
優遇措置Aの場合は、株式の取得原価は500万円-319万8,000円=180万2,000円となり、売却時の損失額は80万2,000円です。
この損失額を、3年間で他の株式譲渡益と相殺できます。
優遇措置Bの場合は、株式の取得原価は500万円-150万円=350万円です。売却時の損失額は250万円となり、3年間で他の株式譲渡益との相殺ができます。
IPOできた場合に受けられる節税効果
エンジェル投資で出資した企業が、IPO(証券市場への上場)を達成した場合には、税制面にも一定の影響があります。
投資先企業が上場を果たした後、株式を売却して大きな利益を得た場合、その譲渡益には所得税が課せられます。
譲渡益を計算する際は、出資時にエンジェル税制で受けた所得控除を足し戻さないといけません。つまり、譲渡益が発生した場合は、出資時と譲渡益発生時で合算すると税制面では何ら変わらないことになります。
とはいえ、出資して手元資金が少ないタイミングで節税効果が得られる点には、一定のメリットがあると言えます。
また、IPOを達成できず譲渡損失が生じた時の優遇がある点から、エンジェル税制は実行しておいて損はありません。
補足:控除額のシミュレーションサイト
エンジェル税制の適用を受けることでどれほどの節税効果が得られるのか、自身で計算することは困難です。
エンジェル税制により受けられる所得控除の金額を簡単にシミュレーションできるサイトがあるので、ぜひ活用してください。
年間の総所得額・エンジェル投資により出資する金額・譲渡損益の金額を入力するだけで、すぐに所得控除額が算出されます。
このようなサイトで利用できるサービスは、あくまでシミュレーションであるため、正確な控除額が決定するわけではありません。しかしエンジェル投資を検討している方にとって、受けられるであろう税制面での優遇の程度を大まかに知るうえでは、非常に有効なツールといえます。。
エンジェル投資で優遇を受けるまでの流れ
エンジェル税制の優遇を受ける場合は、事前に全体的な流れをつかんでおくと安心できるでしょう。
エンジェル投資を実施すると、自動的に節税効果を得られるわけではなく、一定の手続きが必要になります。
エンジェル税制の適用を受ける基本的な流れとして、以下に一般的な手順を紹介します。
- 投資先が対象企業か確認
- 都道府県や企業と書面のやりとり
- 確定申告の際に書類を提出
投資先が対象企業か確認
まずは、投資しようと検討している新規企業が、エンジェル税制の対象かどうかを確認しましょう。出資を実施した後、実は税制の対象外であったという事態にならないよう、確認しておくことをおすすめします。
エンジェル税制の対象かどうか確認するためには、中小企業庁が実施する事前確認制度を利用するのが一般的です。本来、事前確認制度は投資を受ける企業側が活用するものですが、出資する側においても確認作業が可能です。
エンジェル税制の対象であると中小企業庁から認定された企業は、「事前確認書」が交付されます。
都道府県や企業と書面のやりとり
確認を終えたら、実際に金銭を出資して株式を取得します。
出資を受けた企業は、改めて都道府県に対して一定の申請を行い、確認書の交付を受けます。
出資者は、エンジェル税制の適用を受けるために、必要な書類を出資先企業から受け取る必要があります。前述の確認書に加え、株式発行を決議した書面や払い込みを受けたことを証明する書類など、出資者が受け取るべき書類はいくつかあります。
不足があるとエンジェル税制が適用されない可能性もあるため、税制の規定を十分に理解し、抜け漏れなく企業から受け取りましょう。
確定申告の際に書類を提出
必要書類を受け取った出資者は、自身の確定申告の際にその書類を管轄の税務署に提出します。
確定申告の際には、以下の書類の提出を求められます。
- 都道府県知事の確認書
- 一定の株主に該当しない旨の確認書
- 投資契約書の写し
- 株式異動状況明細書
また、優遇措置AとBの選択によって、提出すべき書類が変わるため、注意してください。
確定申告では、必要書類の提出だけでなく、自身で税制に則って申告書を作成する必要があります。必要書類と申告書を提出し、内容に問題がないと判断された場合は、エンジェル税制の節税効果を享受できます。
エンジェル税制の対象企業の探し方
実際にエンジェル投資をする際に、エンジェル税制が適用される企業を見つけるためにはどうすれば良いのでしょうか。
エンジェル税制の対象企業の探し方として、一般的な方法を以下に3通り紹介します。
- 中小企業庁に掲載された一覧から探す
- マッチングプラットフォームを利用
- 株式投資型クラウドファンディングを利用
中小企業庁に掲載された一覧から探す
中小企業庁のホームページに掲載された一覧を確認するのが、最も一般的で確実な方法です。
前述したように、エンジェル税制の適用を受ける際、出資を受ける企業は都道府県に事前確認などの届け出を行い認定を受ける必要があります。この認定を受けると、中小企業庁のホームページ上に掲載されます。
もちろん、手続きを終えた企業のみが掲載されているため、すべての対象企業を確認できるわけではありません。とはいえ、確実にエンジェル税制の適用を受けたい場合には、中小企業庁の一覧を確認することがおすすめです。
マッチングプラットフォームを利用
マッチングプラットフォームを利用して、エンジェル投資による出資先を見つける方法があります。
マッチングプラットフォームとは、出資を行いたい資産家と資金調達を希望する事業者をつなぐサービスを提供する場です。資産家と事業者がともに登録を行い、プラットフォーム上で条件が合う相手を探せます。
登録者同士で自由にメッセージのやり取りが可能なため、資産家は積極的に出資先を見つけられるサービスといえます。
株式投資型クラウドファンディングを利用
株式投資型クラウドファンディングを利用することも、エンジェル投資先を見つける方法の1つです。
株式投資型クラウドファンディングとは、資金を出資することで株式が得られるクラウドファンディングの一種です。どのような事業を展開しているのかを理解したうえで出資先を決められるため、事業を応援する意向を持ちやすくなります。
エンジェル税制が適用される保証はありませんが、投資先の財務状況や事業内容が公開されているケースが多いため、自身で判断する材料は十分にあります。
節税のための投資先探しならFounder
引用元:Founder公式HP
エンジェル税制が適用される、節税のための投資先を探すなら、Founderというマッチングプラットフォームサイトの利用もおすすめです。
Founderには、出資を希望する投資家及び資金調達を目指す事業者ともに、多くの登録者が存在します。会員登録を終えると、自由に登録者同士でメッセージのやり取りが可能になるため、積極的な出資先探しが可能です。
エンジェル投資の醍醐味である、出資先を応援しながら資産運用をする意味でも、応援したい出資先が見つけやすいサービスといえます。無料で登録が可能なため、まずは気軽に利用してみてはいかがでしょうか。
まとめ
エンジェル投資による出資には、エンジェル税制が適用されて節税効果を得られる可能性があります。出資を行った年度だけでなく、株式を売却して損失が発生した年度にも税制が適用されるため、出資する前に制度について理解しておくと良いでしょう。
エンジェル税制が適用される出資先を見つける際は、中小企業庁のホームページを確認したり、株式投資型クラウドファンディングを利用してみましょう。また近年では、資産家と事業者をつなぐサービスも充実しており、出資先を探しやすくなっています。
もし、資産家と事業者をつなぐマッチングプラットフォームに興味がある場合は、Founderにご相談ください。
Founderは登録者数が非常に多く、全ての経営者に向けたさまざまなサポートを行っています。公式サイトでは、前日の登録者数や投稿数の他、前月のマッチング数や資金調達総額を公開しているため、自身の趣旨にマッチした支援先を容易に見つけることが可能です。
投資先をお探しの方は、ぜひFounderにご相談ください。
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