どんなマーケティング手法よりも大切なユーザーニーズの考え方
登録日:2018.10.1 | 最終更新日:2018.12.30
ビジネスを成功させるためにマーケティング手法を学ぶ人は多い。
だが「どう売るか」という手法を知っただけでは、ビジネスを成功させることはできない。
ビジネスの成功にはもう一つの視点が肝心だ。それは「誰にどんな価値を提供するか」というユーザーニーズの視点である。
と言っても今回は、「奇抜な新製品をつくろう」とか「より質の良いものをつくろう」といった話ではない。
確かにそれらもマーケティング戦略の一環ではあるが、もっと本質的な問題を見過ごしてはいけない。
マーケティングにおけるどんな手法よりも、また戦略よりも大切なのは、その商品・サービスが誰のどんな問題を解決できるかだ。
「誰が欲しがってくれるか」と言い換えても良いかもしれない。
欲しがる人が多い商品は高くても売れる。誰も欲しがらない商品はどんなに安くても売れない。
だから、ビジネスを成功させる鍵は「ユーザーニーズ」にある。
できるだけ広いユーザーニーズにできるだけ深く訴えかけることができれば、売上は自然と跳ね上がる。
全てのマーケティングの本質はユーザーニーズにあると言っても過言ではない。
今回はその「ユーザーニーズ」の考え方、捉え方について解説していこう。
ユーザーニーズとは
ユーザーニーズとは消費者(ユーザー)が抱えている願望や課題のことだ。
「オシャレな部屋で暮らしたい」
「もっと便利な家電が欲しい」
「面倒な手続きはしたくない」
「運動不足をなんとかしたい」
こういった「したい」「したくない」「欲しい」「解決してほしい」という願望や課題がユーザーニーズだ。願望や課題を解決してくれる商品でなければ、消費者は購入しない。
自社の商品・サービスが「誰の」「どんなニーズを」解決することができるのか。これを的確に掴むことがビジネスを成功に導く。
ちなみに、ユーザーニーズは「顕在ニーズ」と「潜在ニーズ」の2種類に分けて考えることが大切だ。両者の違いについて説明しておこう。
1.顕在ニーズとは

顕在ニーズとは、ユーザーがすでに自覚しているニーズのことだ。
たとえば電話中にメモをしたいのにペンが見つからない。このシチュエーションでは誰もが「ペンが欲しい」と自覚している。この「ペンが欲しい」という感情が顕在ニーズだ。
顕在ニーズを満たすためには、ユーザーが欲しいと口にするものを提供すれば良い。この例の場合では、ペンを差し出すことでユーザーニーズが満たされる。
もう少し実際のビジネスに近い形で例えてみよう。
家電量販店のエアコン売り場で悩んでいた顧客が、店員であるあなたに声をかけてきた。「エアコンが古くなってきたため買い換えたいのだが、どれを選んだら良いか分からない」と言う。
この顧客に対してどのエアコンを勧めるべきかを探るため、ユーザーニーズを引き出してみよう。
「どんな機種をお探しですか?」という質問はあまり良くない。
これは店員視点の質問だ。ユーザーニーズを探るには、ユーザー視点で質問をしなくてはいけない。
「今お使いのエアコンでご不満な点はございますか?」という質問の方がずっと良い。
これならば、顧客が普段不満に思っていること(ユーザーニーズ)を聞き出しやすい。
ここで顧客の口から出てくるのは全て顧客自身が自覚しているニーズ――つまり「顕在ニーズ」だ。
<エアコン購入客が自覚している「顕在ニーズ」>
- 冷暖房の効きが悪い
- 音がうるさい
- 立ち上がりが遅い
こうした顕在ニーズは、店員側から提示することもできる。
「十数年前の機種となると、だいぶ冷暖房の効果も落ちてきているのではありませんか?」と質問すれば、顧客から「ああ、あるある。そのとおりなんだよ」と返ってくるだろう。
普段から感じている顕在ニーズのことを、ユーザー視点の3タイプにおいては「あるある型」のニーズと呼ぶこともある。
ニーズにまつわるユーザー視点の3タイプには、他に「そうそう型」「へぇ型」の2種類がある。
こちらの2種類については、次の「潜在ニーズ」の項で解説しよう。
2.潜在ニーズとは

潜在ニーズとは顧客自身も気づいていない隠れたニーズのことだ。
たとえば、こんなシチュエーションを想像してほしい。
何時間も続けている作業に、どうも気が乗らなくなってきた。
しかし休憩がてら昼食を食べたら、やる気が復活した。ここで初めて「自分はお腹が空いていたんだな」と気づく。
このユーザーは、自覚がなくても「空腹感」という課題を抱えていたことになる。この空腹感こそが潜在ニーズだ。
先ほどと同じように、家電量販店の例で見てみよう。
潜在ニーズを引き出すためには、困っていることを顧客に聞くだけでは足りない。顧客自身が気づいていないニーズを、店員側から提示する必要がある。
エアコンを買い替える際の潜在ニーズといえば、次のようなものが予測できるだろう。
<エアコン購入客に隠れた「潜在ニーズ」>
- フィルター掃除が面倒くさい
- 電気代が高い
この2点はそれぞれ、ユーザー視点の3タイプでいうと「そうそう型」「へぇ型」に該当する。
まず「フィルター掃除が面倒くさい」という悩み。これは店員に話しかけた時点ではすっかり忘れているか、あまり自覚していなかった悩みだ。
店員との会話の中で「エアコンの掃除って大変ですよね」という話が出て、初めて「そうそう、面倒くさいんだよ」とハッとする。
この後に「こちらのエアコンは自動でフィルターを掃除してくれるんですよ」と紹介されれば、購買意欲が高まるだろう。
普段は意識していないものの、質問や会話をきっかけにハッと思い出すことができる願望や課題を「そうそう型」のニーズと呼ぶ。
「そうそう型」のユーザーニーズを掘り起こすには、売り手側がニーズの存在を把握していることが大事だ。
「こういう需要がありますよね」と質問することで、初めて「そうそう、それが欲しいんだった」とユーザー側の購買意欲を掻き立てることができるのである。
もう一つの「電気代が高い」という課題については、ユーザーはひょっとしたら意識すらしていないかもしれない。
「技術進歩により新しい機種は省エネ機能が充実しており、古いエアコンを使うよりも電気代が安くなる場合が多いんですよ」と説明を受けて初めて、ユーザーが「へぇ、そうだったのか」と電気代を意識する場合がある。
このように問題の存在を自覚しておらず、解決する手段があることすら知らない場合、そのユーザーニーズは「へぇ型」のニーズと呼ばれる。
「へぇ型」のユーザーニーズを発掘するには、まず企業側が「こうしたらもっと便利になるのではないか、ユーザーに喜ばれるのではないか」と推測する作業が必要だ。
ユーザーにとっての「当たり前」を覆し、かつ生活をより良くできる商品・サービスを提案できるのがこの「へぇ型」ニーズの特徴だ。
さてビジネスを行う際には、これら顕在ニーズ/潜在ニーズのうち、どちらをより意識した方が良いのだろうか?
答えとしては、「潜在ニーズを意識すべき」というのが正解である。
一説によれば、人間の行動の70〜90%は無意識に行われている。ということは、ユーザーアンケートで引き出すことができる「顕在ニーズ」は、ニーズの10〜30%に過ぎないということだ。
ユーザーの悩みの70〜90%を占める「潜在ニーズ」をいかに上手に掘り起こし、解決することができるか。ここにビジネス成功の鍵がある。
掘り起こす潜在ニーズは、「あるある型」でも「へぇ型」でもかまわない。また必ずしも画期的な新製品を開発する必要はない。
ただ少しだけ視点をずらしてみることが、新たなユーザーニーズの発掘に繋がる場合が多い。
ここで今までにあった具体例を伝えたい。
UVカットのサングラス。これはもともと宇宙飛行士のために開発された紫外線除去グラスの技術を応用してつくられたものだ。
宇宙空間で作業する宇宙飛行士は、常に強い紫外線の驚異にさらされている。彼らの目を守るために開発された技術が、「メガネ」という日常的なツールに応用されることで爆発的な需要を手に入れた。
現在UVカットサングラスは、おそらくNASAの宇宙飛行士だけが使っていたときとは比べ物にならない収益を生み出しているはずだ。
フリーズドライ食品も、もともとはNASAの開発したものである。
宇宙船に積み込まれるために生まれた製品が、今や多くの家庭で常備品として重宝されていることはご存知のとおりだ。
このように、ユーザーニーズは、一つの商品・サービスにつき一つだけ、と決まっているわけではないのだ。
自社の商品・サービスの価値も、頭ごなしに決めつけてはいけない。
ターゲットとなるユーザーが変われば、同じ商品が全く別の意味を持つ画期的なアイテムとして生まれ変わることがある。
自分の売りたい商品がどんなユーザーのニーズを満たすことができるのか、あらゆる視点から可能性を探ってみよう。
自分のビジネスが役立つ場面をあれこれ想像するのは、起業家にとって楽しい作業でもあるだろう。
どんなマーケティング手法よりもユーザーニーズが重要な理由
これから起業しようという場合、あなたは何を重視してビジネスプランを立てるだろうか?「何を売るか」「どこに店を構えるか」などから考え始める人も多いと思う。だが、私はそのやり方はおすすめしない。
私がまず重視するのは「集客方法」だ。
なぜ集客方法が最も重視されるべきなのか。
それは、どんなビジネスであれお金を支払うユーザーがいなければ絶対に成功しないからである。
そもそもビジネスというのはユーザーありきのものだ。
どんなに素晴らしい商品でも欲しがるユーザーがいなければ1つも売れないし、どんなに手間のかからないサービスでも「欲しい」と感じるユーザーが多ければビジネスとして充分成り立つ。
例えば、あなたが飲み会の幹事を引き受けたとしよう。
1人5000円の会費を受け取り、その金額に値する飲み会にしようと一生懸命お店を探し回った挙句、1人あたり5000円ぴったりで飲み会が終了したとする。
時間も手間もかけてお店選びをしたのに、あなたの手元には1円も残らない。充実感は得られるかもしれないが、これをビジネスにすることは不可能だろう。
だが酒や料理の質を落とさず、安く提供してくれるお店を発見したとする。飲み会が終わった時点で1人あたり4000円で収まった。このときあなたの手元には1000円×人数分という「収益」が残る。
これならばビジネスとして成立する可能性がある。
要は飲み会の参加者(ユーザー)が満足する形で、かつ自分の手元にお金が残る工夫をすれば、それはビジネスになり得るのだ。
ただし、ユーザーがいなければお話にならない。いくら収益が上がるからと言って「安ければ良い」という視点でお店を選んでしまえば、参加者が不満を持つ可能性が高い。
「あの人が幹事をするといつもお店選びがひどい」という噂が立てば、誰もあなたの企画する飲み会には参加しなくなるだろう。
大事なのは、ユーザーだ。
ビジネスを継続するにはユーザーのニーズを満たし収益を上げる必要がある。
ここを肝に銘じておいてほしい。
ニーズとウォンツの違い
ユーザーニーズを掘り起こすときには、欲求を「ニーズ」と「ウォンツ」の2種類に分けて考えていくとスムーズだ。
ニーズとウォンツはどう違うのか、簡単に説明していこう。

「ニーズ」とは、ユーザーの心の奥にある抽象的な欲求のこと。
現状と理想との間に不足しているギャップがあり、それを解決するものが必要だと感じているモヤモヤとした「必要性」がニーズである。
一方「ウォンツ」とは、そのニーズを満たすための具体的な欲求のこと。
これが欲しい、あれが欲しい、と具体的に思っているときの特定の「これ」や「あれ」に当たるのがウォンツである。
もっと分かりやすく言うと、次のとおりだ。
<喉が乾いたから水が欲しい場合>
- ニーズ:喉を潤したい
- ウォンツ:水が欲しい
<家事の時間を節約したいから食器洗浄機が欲しい場合>
- ニーズ:家事の時間を節約したい
- ウォンツ:食器洗浄機が欲しい
何がニーズで何がウォンツなのか迷ったときは、「目的がニーズで、手段がウォンツ」と考えると把握しやすい。
ビジネスの現場では、さらにニーズとウォンツを深く掘り下げていくことも重要だ。
たとえば「家事の時間を節約したい」というニーズに対し、「なぜ時間を節約したいのか?」と掘り下げる。ユーザーは趣味のために時間を使いたいのかもしれないし、家族と一緒に過ごす時間を確保したいのかもしれない。
家事に割く時間がどうこうというよりも「自由な時間を確保したい」というのが本当のニーズなのであれば、食器洗浄機以外にもその課題を叶える商品・サービスはたくさん考えられる。
また「もっと家族と一緒に過ごしたい」というのが本当のニーズなのであれば、逆に家族の顔を見ながら食器洗いができるオープン型キッチンにも需要が生まれるかもしれない。
マーケティングで大切なのは、ユーザーの主張する「ウォンツ」や表面的な「ニーズ」に惑わされることなく、もっと深い場所にある「本来のニーズ」を掘り下げる作業だ。
本来のニーズを的確に探り当てることができれば、ビジネスが成功する確率は大きく上がる。
ウォンツからニーズを把握するたった1つの方法
では、ユーザー自身も気づいていないかもしれない「本来のニーズ」を把握するためには、どうしたら良いのだろうか?その方法はたった一つ。顧客の口にする「ウォンツ」から理由を掘り下げていくことである。
市場で顧客が口にする「Aが欲しい」という欲求は、ほとんどがウォンツ(手段)だ。
これを鵜呑みにして「Aなら何でもいいのだな」と解釈したり、「うちの商品はAじゃないから関係ない」と諦めたりしてしまってはいけない。
経営者としてまず行うべきなのは、「なぜそんなにAが欲しいのだろうか?」と考えることである。
「自転車がほしい」と言う青年がいたとしよう。
これは典型的なウォンツだ。そこで「なぜ自転車が欲しいのか?」と掘り下げて質問をしていく。
彼は「彼女とサイクリングがしたい。だから自転車が欲しい」と答えるかもしれない。
これで「彼女とサイクリングがしたい」という1段階めのニーズが明らかになった。しかし、これはまだ表面的なニーズに過ぎない。
さらに踏み込んで探ってみよう。
彼にとって本当に重要なこと(本来のニーズ)は、「彼女とデートすること」なのか?
それとも「気持ちよくサイクリングをすること」なのだろうか?
「彼女とのデート」が目的とするゴールの形なのであれば、購入するのは自転車でなくても良いかもしれない。
彼の本来のニーズを満たすのは、むしろ「映画のペアチケット」や「夜景の見えるレストランでの食事」である場合も考えられる。
逆に「気持ちよくサイクリングをすること」が最も叶えたい欲求なのであれば、「自転車ならば何でもいい」というわけにはいかない。
この場合、彼の本来のニーズを満たすためには「ロードバイク」や「マウンテンバイク」といった目的に適した自転車を慎重に選ぶ必要があるかもしれないのだ。
ユーザーの本来のニーズ(目的)を把握しないまま、ウォンツ(手段)だけを見て商品・サービスを提案してしまうと、的はずれなセールスになりかねない。
こうした事態を防ぐためには、ユーザーが口にするウォンツを元に「なぜそれが必要なのか?」「なぜその商品でないといけないのか?」といった理由を深掘りしていく作業が必要だ。
ウォンツの理由を深く掘り下げていくことで、ユーザー自身も気づかなかった潜在ニーズがポンと出てくることがある。そうしたら、そのニーズを満たすことのできる商品・サービスを提案すれば良い。
この作業が使えるのは、店頭で顧客と直接やりとりするときだけではない。
商品・サービスを企画する段階から、世の中にあふれる「これが欲しい」というユーザーのウォンツの声を取り上げて、「なぜその商品が好まれるのか?」「なぜみんなそれを欲しがるのか?」という問いかけをしてみよう。
自分もしくはチームの中で徹底的に問いかけを繰り返し、深く隠れた本来のユーザーニーズを掘り起こしていくのだ。
この問いかけの繰り返しこそが、ウォンツからニーズを把握するたった1つの方法である。
ユーザーニーズを可視化するゲインとペイン
深く隠れたユーザーニーズを探り当てることに成功したら、それをより具体的な形で言語化していきたい。ここでぜひ活用してほしいのが、ユーザーニーズを「ゲイン」と「ペイン」という2つの視点に分割していく手法である。
この2つの視点で分解すると、ユーザーニーズは現実のビジネスにより落とし込みやすくなる。
1.ゲインとは
ゲイン(Gains)とは、英語で「得る、増やす」という意味の単語。ユーザーニーズにおける「ゲイン」とは、ユーザーにとって増やしたい要素のことを指す。
そのニーズを叶える上でユーザーができるだけ拡大したいと思っている要素――つまり、ユーザーが得られるポジティブな効果のことだ。
ゲインを抽出する際には、ニーズを叶えることでユーザーが得られる具体的なメリットや恩恵、成果、期待していることを書き出していくと良い。
<例>「温泉旅行に行きたい」というニーズを満たす際のゲイン(メリット、成果など)
- リフレッシュできる
- 広いお風呂に入れる
- きれいな景色を堪能できる
- 美味しい料理を食べられる
- 何もせずリラックスできる 他
こうした「ゲイン」の要素をできるだけ増やす工夫をすることで、その商品・サービスがユーザーに選ばれる可能性が高まる。
2.ペインとは
ペイン(Pains)とは、英語で「痛み」という意味の単語。ユーザーニーズにおける「ペイン」とは、ユーザーにとって減らしたい要素のことを指す。
そのニーズを叶える上でユーザーができるだけ排除したいと思っている要素――ユーザーにとって歓迎できないネガティブな影響のことだ。
ペインを抽出する際は、ユーザーがそのニーズを叶える際に問題視しているであろう要素、不安やリスク、不満、悩み、といったことを書き出していくと良いだろう。
<例>「温泉旅行に行きたい」というニーズを満たす際のペイン(不安やリスク、不満など)
- 交通費が高い
- 宿泊費が高い
- 行ってみないと現地の様子が分からない
- 宿の予約が面倒くさい
- 子ども連れのため実際にはのんびりしづらい 他
こうした「ペイン」の要素をできるだけ解消してあげられるなら、それだけその商品・サービスはユーザーの役に立つと言える。
例として手考えてみよう。
- 新幹線+宿泊費がセットになった格安プランをつくる
- 客室の様子や旅館周辺の景色を360度見渡すことのできる動画をwebサイトに載せる
- スマホからでも簡単に予約できる仕組みをつくる
- 小さな子どもを数時間預かる託児サービスをオプションでプラスする
上記のような商品やサービスがなら、ペインを減らすことができる。
一般的に、人はデメリットやリスクに対してメリットや成果よりも敏感に反応するものだ。
ペインを排除することは、ユーザーニーズにマッチした商品・サービスを構築する上で非常に重要なポイントである。
ペインの要素を極力排除する提案ができると競合に対する大きなアドバンテージになる。
3.ゲインとペインの活用法
ゲインとペインは、どちらもユーザーニーズの中に必ず含まれている。ユーザーニーズを掘り下げていく際、または掘り下げた後に、「どうしたらもっとゲインを増やし、ペインを減らせるのか」を考えていくと良い。
手順としてまずは、これから解決しようとしているユーザーニーズに含まれる「ゲイン」と「ペイン」それぞれの要素を思いつく限り書き出してみよう。
「自社の商品やサービスで本当に対応できるかどうか」という点については、今は考えなくて良い。
とにかく考えられるゲインとペインを全て洗い出し把握するのが先決だ。
それが済んだところで初めて、その一つ一つの要素をじっくり検討し、どうすれば自社製品で対応できるかを考える作業に入る。
ちなみに、ゲインを生み出し増やす要素を「ゲインクリエイター」、ペインを減らし解消してくれる要素を「ペインリリーバー」と呼ぶ。
あなたのビジネスで扱う商品・サービスの働きの中には、必ずこの「ゲインクリエイター」と「ペインリリーバー」という2つの要素が含まれているはずだ。
この2つの要素こそ、あなたのビジネスが持つウリ――つまり、セールスポイントなのである。
ここを訴求していくことで、ユーザーはよりあなたの商品・サービスのもたらすメリットを正しく理解する。
あなたの提供する商品やサービスを、有力な購入商品候補として買い物カートや検討リストに入れてくれるだろう。
ちなみに、1つの商品・サービスが多くのゲインとペインに対応しているに越したことはない。
とはいえ「全てのゲインとペインを解決しなくてはならない」と思い込む必要はない。
ゲインやペインの要素の中には、どちらか一方を満たすことでもう一方をどうしても満たせなくなるという「矛盾の関係」にあるものも多い。
矛盾の関係のなかで代表的なものといえば「品質」と「価格」だ。
100円の原価と手間がかかっているものを10円で売ることはできない。ユーザーもそれは分かっている。
世界中のユーザーの持つ全ての悩みを一気に解決することは、まず不可能だ。
無理に多くのゲイン、ペインに対応しようとするよりも、競合が放置しているたった1つの「ゲイン」「ペイン」に対処することが良い結果を生む場合も多い。
ゲインとペインを洗い出すことは、自社の持つ強みを明らかにし、強化することでもあるのだ。
Webサイト運営におけるニーズ把握の重要性
どんなビジネスにおいてもユーザーニーズは重要だという解説をしてきた。そのユーザーニーズがとくに重視される事業の1つが、私の行ってきた「webサイトの運営事業」である。
第一章でもお伝えしたとおり、私は21歳で起業し25歳で営業利益1000万円を突破。
その後、運営するwebサイトを6億2000万円で売却するまで、一貫してwebサイト運営事業に従事してきた。
私の具体的な経歴は、次のとおりである。
2009年2月 個人事業でアフィリエイト開始
2009年8月 月20万達成
2009年12月 月70万
2010年2月 月100万
2010年3月 月200万
2010年4月 法人化 株式会社ユービジョン設立
2010年12月 月200万から10万ほどに減少
2011年夏 月400~500万ほどまで復活
2012年3月 月500万から600万をキープ
2012年4月 月650万から50万ほどに減少
2012年12月 PPCアフィリエイトで月売上1600万、営業利益1000万達成
2013年10月 収益が月300万円に減少
2014年12月 「存在に価値のあるサイトを作ろう」と考えながら年を越す
2015年1月 業界特化型の中規模ポータルサイト「資金調達プロ」が生まれる
2018年1月 資金調達プロを東証一部上場企業に6億2000万円で売却
これから起業を目指すという読者の中にも、おそらくwebサイト運営事業を視野に入れている方は多いだろう。
だからこそ重ねて言っておく。webサイトの運営をビジネスとして行っていくには、ユーザーニーズを的確に把握することが最も重要であり不可欠だ。
webサイトの運営は、基本的にSEOマーケティングで成り立っている。
SEOマーケティングについては「最も不労所得性の高いSEOマーケティングの5つのポイント」という記事でも詳しく説明している。
ここではピンポイントで伝えるが、SEOで一番大事なポイントは結局「ユーザーのニーズに寄り添う」ことなのだ。
私はかつて、起業家として大きな挫折を経験している。
1度めは2010年12月。このとき私はwebサイトを使ったアフィリエイト事業で月200万円の収益をコンスタントに上げていた。
しかしこの年のこの月に、Yahooの検索アルゴリズムが大幅な方向転換を行い、Googleのアルゴリズムと完全に一体化したのである。
当時私の運営するwebサイトは全て、Yahooのアルゴリズムに合わせて制作されていた。
Yahooの検索結果で上位表示されるよう、SEO対策を徹底して行ってきたのである。
だがアルゴリズムが変わることにより、その効果は無きに等しいものとなった。
所有するサイトは軒並み表示順位を落とし、月200万円の収益は一気に月10万円にまで下降した。
これが1度めの挫折だ。
このとき私は、Yahooに合わせて行っていたSEO対策を急遽Google用に切り替えることで、ピンチをなんとか乗り切った。
だがユーザーニーズという本質的な問題に、私はまだ気がついていなかった。
Yahooに合わせていたwebサイトを新しく主流となったGoogleに合わせてつくり直す。
これは正しい解決策のように見えて、実際はその場しのぎの対策でしかなかったのである。
このことが原因で、私は再び窮地に陥ることとなる。
2度めの挫折は、2012年4月。このとき私は最初のピンチをなんとか乗り越え、事業を拡大している最中だった。
月の収益は650万円を超え、3名の社員を雇い入れていた。
事業は順調に見えたが、この年のこの月に今度はGoogleが大幅なアルゴリズムの変更を行ったのである。
かつて解決したはずの問題がまた再び持ち上がった。
Googleに合わせてつくったはずのサイトが、アルゴリズムの変更によりGoogleで上位表示されなくなってしまったのだ。
このときにはすでにYahooはGoogleと同じアルゴリズムで動いていた。そのため、私の運営するサイトはYahooでももちろん上位表示されない。
日本国内で90%のシェアを誇る2つの検索エンジンに、そっぽを向かれてしまった状態だった。
ユーザーに見てもらえなくては、アフィリエイトつまり広告事業は成り立たない。月650万円だった収益は、月50万円にまで落ち込んだ。
私一人ならなんとかなる数字だったかもしれない。だが前述のとおり、私はすでに3人の社員を雇用していた。
口座から人件費を差し引けば、会社の余命は残り半年といったところまで迫っていた。
この経験で、私は大きなことに気がついた。
GoogleやYahooに限らず、社会にあるほとんどの起業はユーザーに合わせてアップデートを重ねている。プラットフォームであっても時代に合わせて改善をする。
だから、ユーザーのニーズに答えることこそビジネスの本質なのだ。
1度めの挫折の時点でユーザーニーズの重要性に気づくことができていれば、2度めの挫折はおそらく回避できたはずだ。
Googleのアップデートは当たり前だが決して悪意などではなく、「ユーザーのために」「ユーザーがより使いやすいように」行われるものだからである。
2度の挫折を経験し、私は自分のビジネスをことごとく見直した。何が問題だったのか。どうすれば良かったのか。
出した答えは「ビジネスの本質とはユーザーありきなのだ」というごくシンプルなものだった。
どんなビジネスもユーザーに価値を感じてもらえなければ結局は頓挫してしまう。
逆にどんなに当たり前に思えることでも、誰かがそこに価値を感じてお金を支払ってくれるのであればそれはビジネスになり得る。
結局、ビジネスはユーザーありき。webサイト運営、アフィリエイト事業には、とくにその意識が必要だ。
これはきれいごとでも何でもない。私の経験則からお伝えしている純然たる事実なのである。
ちなみに、SEOマーケティングの具体的なポイントについては、「最も不労所得性の高いSEOマーケティングの5つのポイント」を参照してほしい。
ここに書かれているのは小手先の技術を身につけるその場しのぎの対策ではない。ユーザーニーズや生産性の考え方も含め、SEOマーケティングについての本質的な内容を網羅したつもりだ。
これからwebサイト運営事業を始めようという人には、一読の価値ありと自負している。
「この世に売れないものはない」というタイトルの書籍が話題になったことがある。たしかにこの言葉のとおりだと、私は思う。
ユーザーが必要としているものを正しく理解し求めているところまで提供できれば、ビジネスの失敗は起こりえない。
そして、そのユーザーが必要としているもの――つまり、ユーザーニーズを「掘り起こす」ことは誰にでもできる。
中小企業だろうが、個人事業主だろうが関係はない。ユーザーニーズを掘り起こす能力は誰だって訓練で身につけられる。
どうしたらユーザーの課題を解決し、願望を満たすことができるのか。
どうしたら自分が今持っている商品やスキルを使って、ユーザーに価値を提供することができるのか。
逆にいえば、これらを追求していくことこそマーケティングの本質とも言える。これを忘れてはいけない。
さて、ユーザーニーズの掘り起こしができたら、今度は価値をどう提供していくかという「ビジネスモデル」を模索する段階に入ってくる。
せっかく事業をするのであれば、可能な限り高い収益を上げられるビジネスモデルを選びたい。
高収益なビジネスモデルを考える際には、欠かせない3つの原則がある。
次の記事では、高収益を生み出すビジネスモデルのつくり方について解説していこう。
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