約束手形とは?振出人・受取人のメリット・デメリット完全ガイド
公開日:2017.8.4 | 最終更新日:2025.2.14

約束手形を使用するケースは、以前と比べると減少してきています。しかし、業種によっては約束手形による取引が中心になることもありますし、いつ取引先から「手形で支払いたい」と言われるかは分かりません。経営者としてビジネスの世界に進出するのであれば、約束手形の基礎知識は必須と言えるでしょう。
そこで今回は、約束手形の概要に加えてメリット・デメリットなどを解説していきます。約束手形は資金調達にも活用できるものなので、きちんと基礎知識を身につけておきましょう。
■約束手形とは?
約束手形は有価証券のひとつであり、振出人が受取人に対して「指定した期日までに額面金額を支払うこと」を約束する際に使用されます。つまり、約束手形は現金の代わりに使用できるものであり、例えば「商品・サービスを購入したいが、資金繰りの関係で現金を用意できない…」といった状況で使われています。
約束手形に似た有価証券に「為替手形」と呼ばれるものがありますが、両者は以下の点で異なります。
| ・約束手形 | 振出人と受取人の2者間で取引される手形。 |
| ・為替手形 | 振出人と受取人に加えて、支払人の3者間で取引される手形。 |
日本国内においては、商業取引の際には約束手形、海外との取引や取立ての際には為替手形が使用されるケースが一般的です。そのため、日本で流通しているほとんどの手形は約束手形であり、単に「手形」と言う場合は約束手形のみを表すケースも見られます。なお、約束手形を作成して渡す者は振出人、その約束手形を受け取る者は受取人と呼ばれています。
約束手形は現金の支払いを先延ばしするものであるため、中には「振出人にしかメリットがないのでは?」と感じるかもしれません。しかし、実際には受取人にもメリットはありますし、振出人・受取人の双方にデメリットが存在する点も理解しておくべきです。
そこで次からは、振出人・受取人のそれぞれのメリット・デメリットをご紹介していきましょう。
■振出人のメリット
まずは、振出人から見た約束手形のメリットについて解説していきます。
【メリットその1】現金の支払いを先延ばしにできる
振出人にとって最も大きなメリットは、現金の支払いを先延ばしにできる点です。つまり、現金が手元になくても商品・サービスを購入できるので、仮に資金不足に陥っても事業を進められる可能性があるでしょう。
このメリットは、例えば仕入れ~売上代金の入金までに長い期間を要する会社にとって魅力的な部分と言えます。
【メリットその2】単なる口約束よりも信用性が高い
取引先に対して、単に「支払いを延期してほしい」と伝えるだけでは信用してもらえる可能性は低いでしょう。口約束だけでは、「本当に支払ってもらえるか分からない」といった不安が生じるためです。
その点約束手形には効力があるので、単なる口約束に比べると取引先からの信用を得やすくなります。口約束では了承してもらえなかった場合でも、約束手形を振り出すことで支払いを延期できる可能性は十分に考えられます。
【メリットその3】利息が発生しない
約束手形による支払いは一般的な融資とは違い、利息が発生しません。商品・サービスの購入代のみを後に支払えば良いので、利息という無駄なコストを節約できます。
つまり、会社の財務状況のみを考えれば、仕入れ費を調達するためにローンなどを利用するよりも、約束手形を利用したほうがメリットが大きいと言えます。
【メリットその4】資金繰り改善の方法として活用できる
約束手形を上手に活用すれば、会社の資金繰りを改善できる可能性があります。一時的に手元に残せるキャッシュを増やせますし、そのキャッシュを使って支払いまでの間に財務状況を建て直せば、経営状況は大きく好転するでしょう。
■振出人のデメリット
次は、振出人から見た約束手形のデメリットについて見ていきましょう。以下でご紹介するデメリットが深刻なダメージになりそうな時期は、約束手形を振り出すべきではありません。
【デメリットその1】支払時期の負担が増大する
約束手形は支払いを先延ばしにできる手段ですが、支払期日が到来するとその時期の負担が増大します。その結果、支払期日の後に資金繰りが一気に悪化する恐れがあるので、返済計画は手形を振り出す前にきちんと立てておくべきでしょう。
手形の額面金額が多額に上る場合は、数ヶ月前から返済に向けて準備をしなければなりません。約束手形はあくまでも支払いを先延ばしにできる方法であり、支払いが免除される方法ではないので、返済に向けてきちんと準備をするようにしましょう。
【デメリットその2】応じてもらえない可能性がある
約束手形は2者間で交わされる取引なので、仮に相手方が拒否をするとその取引は成立しません。ほとんどの会社は「キャッシュをできるだけ確保したい」と考えているため、約束手形による取引を拒否される可能性は十分に考えられます。
なお、拒否されたからと言って強引に交渉をするべきではありません。取引先に悪い印象を与えると今後の経営にも関わってきますし、必死に交渉をすると「資金繰りに困っていそうだから、今後の付き合いはやめておこう」と思われてしまう恐れがあります。
約束手形による取引を検討している場合は、相手方の事情も考えるようにしましょう。
【デメリットその3】信用性を失う恐れがある
約束手形の支払期日に支払いをしなかった場合、受取人からの信用性は一気に下がってしまいます。そのため、支払いが難しいと分かったタイミングで、すぐに何らかの対応をしなければなりません。
主な手段としては、振り出した手形を返してもらい、新たな約束手形を振り出す方法が挙げられます。これを「手形のジャンプ」と言いますが、手形のジャンプを繰り返せば無期限に支払いを延長できるわけではありません。
手形のジャンプを希望する場合にも、当然受取人の了承が必要になるので、そのうち手形のジャンプを断られてしまう可能性があります。また、手形のジャンプを繰り返していると、それだけで受取人からの信用を失ってしまうため、手形のジャンプは万が一の手段として考えておきましょう。
【デメリットその4】印紙代がかかる
約束手形を振り出す際には、印紙代を支払う必要があります。印紙が貼られていない約束手形は効力を失ってしまう恐れがあるので、印紙代は必ず必要になると考えておきましょう。
印紙代の金額については、約束手形の額面金額によって以下のように異なります。
| 約束手形の額面金額 | 印紙代 |
| 500万円 | 1,000円 |
| 1,000万円 | 2,000円 |
| 3,000万円 | 6,000円 |
| 1億円 | 2万円 |
「大した金額ではない」と感じるかもしれませんが、印紙代は約束手形1部ごとにかかってくるコストなので、約束手形を振り出す回数が多いほど負担になってきます。
| 振出人のメリット | 振出人のデメリット |
| ・現金の支払いを先延ばしにできる
・単なる口約束よりも信用性が高い ・利息が発生しない ・資金繰り改善の方法として活用できる | ・支払時期の負担が増大する
・応じてもらえない可能性がある ・信用性を失う恐れがある ・印紙代がかかる |
■受取人のメリット
振出人からの支払いを先延ばしにするため、約束手形は受取人にとってメリットがないと感じるかもしれません。しかし、実際には受取人にもいくつかメリットは発生するので、以下で具体的なメリットを確認しておきましょう。
【メリットその1】口約束よりも信用できる
約束手形には一定の効力があるので、単なる口約束に比べると取引先を信用しやすいと言えます。万が一支払いに応じてもらえなかった場合でも、約束手形の現物があれば手形訴訟を起こせるので、売上金を徴収できる可能性は高まるでしょう。
また、単なる口約束の場合は、その約束を忘れてしまう恐れも考えられます。約束手形による取引では手形の現物が残るので、そういった物忘れも防ぐ効果があるでしょう。
【メリットその2】手形割引で現金化ができる
約束手形を受け取った場合は、基本的に支払期日まで待ってから現金を受け取ることになります。しかし、中には急に会社の資金繰りが悪化し、「すぐにでも現金化したい」と感じる経営者もいることでしょう。
そのような方にとって便利な金融商品が、銀行や手形割引業者が提供している「手形割引」です。手形割引は、支払期日の前に約束手形を現金化できる商品なので、手形割引を利用すれば都合が良いタイミングで現金を調達できます。
ただし、手形割引を利用すると「割引料」と呼ばれるコストがかかりますし、万が一その手形が不渡りの状態になると、振出人に対して手形訴訟を起こすなどの手間が生じます。持ち込み先によって借入条件が大きく異なる点も、手形割引では注意したいポイントでしょう。
【メリットその3】振出人に対して優位な立場を築ける
手形割引の受取人になれば、振出人に対して優位な立場を築ける可能性があります。約束手形は支払いを延期する手段なので、振出人には少なからず負い目が生じるためです。
では、優位な立場を築くことで、具体的にどのようなメリットが発生するのでしょうか?取引先との関係性にもよりますが、主なメリットとしては以下が挙げられるでしょう。
| ①今後の交渉を有利に進められる。 |
| ②自社の商品・サービスを購入してもらいやすくなる。 |
■受取人のデメリット
約束手形の受取人は、特に発生するデメリットに注意をする必要があります。以下で解説するデメリットによって、経営状況が一変してしまう恐れがあるので、受取人になる可能性がある方はきちんとデメリットを確認しておきましょう。
【デメリットその1】不渡りになる可能性がある
約束手形の振出人が、支払期日が到来しても支払いに対応しない状況を手形の「不渡り」と言います。不渡りを半年に2回起こすと銀行取引が停止されてしまうので、ほとんどの振出人は手形の支払いを優先的に考えるでしょう。
しかし、例えば振出人の会社が倒産間近のケースでは、それでも支払いに対応してもらえない可能性があります。不渡りになった状態の約束手形にも効力はありますが、振出人に支払いを断られ続けると、その手形はただの紙切れになってしまう恐れがあるでしょう。
つまり、売却した商品・サービスをただ失っただけの結果が残るため、受取人にとっては大きな損害になります。
【デメリットその2】手形割引の審査に落ちてしまう可能性がある
手形割引は、必ずしも利用できる金融商品ではありません。ほとんどの銀行・業者では審査が実施され、その審査に通過しない限り手形は現金化できないのです。
手形割引の審査では、振出人・受取人の両方の情報が確認されます。例えば、不渡りになる可能性が高い振出人の約束手形は、銀行や業者も強く警戒をするので、受取人に問題がなくても審査に落ちる可能性があるでしょう。
手形割引を断られてしまった場合、受取人は約束手形の支払期日まで待ち、振出人から支払ってもらうのを待つ以外の選択肢がなくなります。
【デメリットその3】期日を過ぎると現金化できなくなる
約束手形の換金時期は、支払期日を含めた3営業日となります。この期日を過ぎてしまうと、約束手形を銀行に持ち込んでも現金化はできません。
では、仮に支払期日を含めた3営業日が経過してしまった場合、代金回収は不可能になるのでしょうか?これは振出人の対応によって異なり、支払期日を過ぎても約束手形の効力自体はなくなりませんが、その手形は不渡りとしては扱われません。
つまり、振出人にとっては支払いを延期するリスクが下がるため、相手方によっては支払いをさらに延期されてしまう恐れがあるでしょう。
| 受取人のメリット | 受取人のデメリット |
| ・口約束よりも信用できる
・手形割引で現金化ができる ・振出人に対して有利な立場を築ける | ・不渡りになる可能性がある
・手形割引の審査に落ちてしまう可能性がある ・期日を過ぎると現金化できなくなる |
■まとめ
いかがでしたでしょうか?
約束手形は振出人・受取人のどちらにもメリットがあり、その反面でデメリットも存在します。特に受取人は、支払いを延期されることにより資金繰りが悪化する可能性があるので、約束手形による支払いを希望されたら慎重に判断する必要があります。
今回ご紹介したメリット・デメリットを細かく確認し、今後自社に及ぼす影響も考えながら行動するようにしましょう。
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