エクイティファイナンスとは?長所や問題点など4つの項目を徹底解説

公開日:2017.8.4  |  最終更新日:2025.2.14



借入によって資金を調達するデットファイナンスとは違い、エクイティファイナンス利息や返済義務が発生しない資金調達手段です。そのため、返済の負担を少しでも抑えるために、エクイティファイナンスによる資金調達を検討している経営者は多いのではないでしょうか?

しかし、エクイティファイナンスにもいくつかのデメリット・注意点があり、これらを軽視すると会社の経営は傾きかねません。シーンによってはデットファイナンスのほうが望ましい場合もあるので、各手段の特徴はきちんと理解しておくべきでしょう。

そこで今回は、エクイティファイナンスの概要について解説していきます。特に株式会社の設立を検討している方、経営者などはしっかりと知識を身につけていきましょう。


■エクイティファイナンスとは?

Dick Thomas Johnson

エクイティファイナンスとは、株式を利用することで資金を調達する手段の総称です。エクイティは「株主資本」を意味しており、エクイティファイナンスでは企業が新株を発行し、その新株を買い取ってもらう形で資金調達を行います。

では、具体的にはどのような方法がエクイティファイナンスに該当するのでしょうか?主な方法としては以下が挙げられます。

 

・公募50人以上の不特定多数の投資家に対して、新株を発行して取得の勧誘をすること。「時価発行増資」とも呼ばれている。
・株主割当既存の株主に対して、新株を発行して資金を調達する方法。各株主に申し込み・払い込みなどの義務はなく、新株を取得するかどうかは自由に選択できる。
・第三者割当従業員や金融機関、親会社など、特定の者に向けて新株を発行する方法。一般的なケースでは、時価よりも低い価格で新株が取引される。
・転換社債型新株予約権付社債好きなタイミングで株式に転換できる社債のこと。「CB」とも呼ばれており、投資家は「転換価額」より株価が上昇したタイミングで転換すれば、利益を得ることができる。

 

上記をまとめると、新株発行を伴う増資や新株予約権付社債に該当する手段は、エクイティファイナンスに含まれます。

エクイティファイナンスは会社の資本に影響を与える手段なので、単に資金不足という理由だけで利用されるケースは稀です。エクイティファイナンスが利用される主な場面としては、以下が挙げられるでしょう。

 

・企業の体質を強化するために、資本の充実が必要な場面
・企業が発展するために、資本の充実が必要な場面
・資金を調達することで、比較的長い期間利益が増える場面

 

上記に該当する会社はエクイティファイナンスが効果的な経営戦略になる可能性がありますが、冒頭でも触れた通りエクイティファイナンスにはデメリット・注意点もあります。そのため、エクイティファイナンスは安易に進めるべきではなく、今後への影響も踏まえて慎重に計画を立てなければなりません。

 

■エクイティファイナンスの4つの種類とは

エクイティファイナンスで新株を発行して増資をする方法は、大きくわけて4つあります。

  1. 公募
  2. 株主割当
  3. 第三者割当
  4. 転換社債型新株予約権付社債

それぞれ解説していきます。

【エクイティファイナンスの種類その1】公募

公募とはそのタイミングの時価に近い価格で新株を発行し、不特定の投資家から資金調達をする方法です。株価次第で、少量の株式発行でも多くの資金を集められるのが特徴といえます。

一般投資家が対象になり、既存・新規株主の縛りはありません。そのため、公募により株主の層を拡大できるのもメリットです。

【エクイティファイナンスの種類その2】株主割当

株主割当は、新株を既存の株主に限定して割り当てる方法です。割当の枚数は、保有している株式の数に応じて決められます。

ただし、株主は新株を申し込む義務はありません。新株を取得するかどうかは、それぞれの株主が選択できます。取得しない場合は、権利を失効するだけです。

新株の払い込み金額は時価より低く設定されるのが一般的なので、株主側にもメリットがある方法です。また、企業側としては株主の株式所有の比率が変わらないため、経営権に大きな変化がおきないのがメリットになります。

なお、「既存の株主」に自社は含まれず、自分に割り当てることはできないので注意しましょう。

【エクイティファイナンスの種類その3】第三者割当

第三者割当てとは、特定の人たちに新株を割り当てる方法です。既存の株主とともに、新規の第三者に新株を割り当てることができます。たとえば、自社の従業員や親会社、取引先などが対象です。

既存の株主だけに割り当てる場合も、配分が保有数に応じていない場合は株主割当とは呼びません。持ち株数と異なる比率の場合は、第三者割当に当たります。

第三者割当は時価よりも低い価格で発行されることが一般的で、自社の株価が低いときによく使われる方法です。また、取引先や業務提携先との関係を強化するときにも用いられます。

【エクイティファイナンスの種類その4】転換社債型新株予約権付社債

転換社債型新株予約権付社債とは、希望に合わせて株式に転換できる社債です。途中で株式に変えることもでき、そのまま社債として持つことも可能株式の価格は発行時点で決められているので、株価が値上がりすれば大きな利益を得られるのがメリットです。

社債として持ち続ける場合は毎年一定の利払いがあります。普通社債に比べて利回りは低いですが、どちらの形にしても損することがありません。満期まで社債として持ち続けた場合は、額面の金額が償還されます。

■エクイティファイナンスの5つの長所

エクイティファイナンスの概要を理解したら、次は長所・短所を見ていきましょう。まずは、エクイティファイナンスの長所(メリット)から解説していきます。

 

【長所その1】返済義務が生じない

エクイティファイナンスで調達した資金には、原則として返済義務が発生しません。経営戦略が成功した場合に、投資家に対して配当金などを支払う必要は生じますが、返済期限が定められないので経営が圧迫されにくい調達手段と言えます。

多額の資金を調達しても毎月の返済に追われず、多重債務に陥ることもない点は、経営者や会社にとって大きなメリットになるでしょう。

 

【長所その2】利息が発生しない

デットファイナンスとは違い利息が発生しない点も、エクイティファイナンスの大きな魅力です。利息が発生しないので、エクイティファイナンスでは余計なコストを抑えた形で資金を調達できます。

利息は企業にとって重要なコストであるため、デットファイナンスを利用する際に各金融機関の商品を細かく比較する経営者は多く見られます。この商品比較には時間や労力が必要になりますが、そもそも利息が発生しないエクイティファイナンスでは融資元を比較する必要がないので、情報収集の手間も省けるでしょう。

 

【長所その3】貸借対照表で「資本」として扱われる

エクイティファイナンスで調達した資金は、貸借対照表(バランスシート)上で「資本」として扱われます。デットファイナンスのように「負債」として扱われることはないので、貸借対照表の印象が悪くなりません。

企業にとって貸借対照表は、非常に重要な意味合いを持ちます。例えば銀行などから融資を受ける場合に、貸借対照表の負債は細かくチェックされるためです。負債が多い状態は「経営難」を意味するので、負債が多いほど融資は受けづらくなってしまいます。

その点、エクイティファイナンスはどれだけ利用しても貸借対照表上の負債が増えないので、貸借対照表の評価を下げることなく資金を調達できる可能性があります。

 

【長所その4】調達資金は「自己資本」として扱われる

これは【長所その3】とも関連しますが、エクイティファイナンスで調達した資金は「自己資本」に含まれるので、資金を調達するほど会社の自己資本比率は増えていきます。自己資本比率とは、全ての資本に対する自己資本の割合のことです。

一般的に、自己資本比率が高い会社は「資金力がある」と判断されるケースが多く、銀行などの金融機関も審査の際には自己資本比率を重視します。自己資本比率に関しては、40%を超えていれば経営が比較的安定している、70%を超えていれば優秀な企業であると判断して良いでしょう。

 

【長所その5】財務体質の強固や会社の発展につながる

会社が発展するためには、自己資本を増やすことが必須です。自己資本が増えなければ必要な部分に資金を投下できませんし、規模の拡大も難しくなるためです。

そのため、エクイティファイナンスを利用すると会社の財務強固や発展につながります。いつでも資金投下が可能な状況を作っておくことで、ビジネスチャンスも逃しづらくなるでしょう。

■エクイティファイナンスの4つの短所

alice_mercer

次は、エクイティファイナンスの短所(デメリット)について見ていきましょう。一見するとデットファイナンスよりエクイティファイナンスのほうが優れていると感じるかもしれませんが、以下で挙げる短所は会社にとって致命的なダメージになる恐れがあります。

 

【短所その1】経営権を握られる可能性がある

エクイティファイナンスによって資金を調達すると、各株主の持ち株比率が変わってきます。例えば既存の株主が新株を取得すれば、その株主の持ち株比率は以前よりも上昇するため、経営権を握られる可能性が生じてきます。

この点は、特に「自由なスタンスで経営をしたい」と考えている経営者にとっては脅威です。株式会社は株主の意見を無視することはできないので、経営者が考えていた計画を実行できなくなる恐れがあるでしょう。

 

【短所その2】会社の支配関係が変わるリスクがある

会社の組織構成や支配関係が変わる可能性がある点も、エクイティファイナンスの短所です。株主が経営に口を出すようになると、社内の権力図が変わるかもしれません。

極端な話を言えば、経営者であるあなたの権力が以前より薄れてしまう可能性も十分に考えられます。その結果、会社全体がスムーズに回らなくなり、経営不振に陥るようなケースも見られるので注意が必要です。

 

【短所その3】配当政策に影響が及ぶ

株式会社は各株主に対して、利益に応じた配当金を支払わなくてはなりません。エクイティファイナンスによって資金を調達すると、発行株式数や各株主の持ち株比率が変わってくるので、配当政策を調整する必要性が生じてきます。

配当政策は企業の経営に大きな影響を及ぼすことがあり、配当金が増え過ぎると企業の利益は減ってしまいます。エクイティファイナンスにはそのようなリスクがあることも、きちんと理解しておきましょう。

 

【短所その4】将来の影響を予測しづらい

エクイティファイナンスが会社に及ぼす影響は、各株主の行動によって変わってきます。持ち株比率が増えても経営にあまり関与しない株主も見られますし、逆に積極的に経営に関与する株主も存在しているためです。各株主がどのような行動に出るのかは、実際に新株を発行してみないと分かりません

そのため、エクイティファイナンスは将来の影響を予測しづらい手段であり、具体的なリスクが見えにくい特徴を持っています。また、将来の影響を細かく予測するにしても、分析や情報収集に多くの労力を割く必要があるでしょう。

 

長所短所
・返済義務が生じない

・利息が発生しない

・貸借対照表で「資本」として扱われる

・調達資金は「自己資本」として扱われる

・財務体質の強固や会社の発展につながる

・経営権を握られる可能性がある

・会社の支配関係が変わるリスクがある

・配当政策に影響が及ぶ

・将来の影響を予測しづらい

 

上記はエクイティファイナンスのメリット・デメリットを簡単にまとめた表です。経営者にとって返済義務や利息が発生しない点は大きな魅力ですが、今後の経営状況が大きく変わるリスクも潜んでいるので、エクイティファイナンスは慎重に検討するべき手段と言えるでしょう。

■エクイティファイナンスとデットファイナンスの違いは?

資金調達には、エクイティファイナンスの他にデットファイナンスという方法もあります。デットファイナンスは、金融機関からの借り入れなど、新株を発行しない資金調達全般を指します。

普通社債の発行も、デットファイナンスの一種。新株予約権付社債のみ、新株が増加するためエクイティファイナンスに含まれます。

デットファイナンスは返済義務があり、返済期限があるのが特徴。一方でエクイティファイナンスはメリットでも述べたとおり、返済の必要がなく、資産として計上できる方法です。ただし、株式の配分次第で経営権に影響があるので注意しなくてはいけません。

また、エクイティファイナンスの場合、投資家に対して支払うのは配当金。投資家側は配当金よりも、将来的に株式を売却して利益を得ることを期待しています。そのため、事業が伸びるまで配当金の支払いは義務ではありません。

一方で、デットファイナンスで支払うのは利息です。投資家側は安定した利息益を期待しており、決まった時期に必ず利息を支払う必要があります。

■エクイティファイナンスの注意点は?

Quinn Dombrowski

最後に、エクイティファイナンスを利用する前に特に注意しておきたいポイントを確認しておきましょう。以下の各ポイントに関してきちんと対策を立てることが、エクイティファイナンスを成功させる上で重要になります。

 

【注意点その1】株価の変動

エクイティファイナンスを利用すると、少なからず株価に影響を与えます。しかし、株価の動向を明確に予測することは難しく、市場がエクイティファイナンスをポジティブに受け止めれば上昇、ネガティブに受け止めれば下落方向に傾くでしょう。

株価は株式会社にとっては重要な意味合いを持ち、今後の資金調達のしやすさにも影響を及ぼします。そのため、事前に株価の動向を分析するだけではなく、「上昇したらどうするのか」「下落したらどうするのか」といった対策を考えておくことが望ましいでしょう。

 

【注意点その2】株主にきちんと説明をする

エクイティファイナンスは経営に大きな影響を及ぼすので、各株主も会社の動向に注目します。資金を調達した後に経営が悪化すると、株主が受け取る利益も減ってしまうためです。

したがって、例えば調達した資金の使途が不透明な場合は、各株主からその使途を問われる可能性があるでしょう。その時点で上手く説明できないと、資金調達が難しくなるだけではなく、各株主が経営に介入してくる恐れがあります。

そのため、エクイティファイナンスを利用する前には、調達した資金の使途を明確にしておきましょう。また、「最終的にどのような目的があるのか」や「その経営戦略の成功率が高い点」なども、株主に対して積極的に説明するべきです。

 

【注意点その3】所定の手続きが必要になる

エクイティファイナンスは会社の発行株数に影響を与える手段なので、実践する際には会社法で定められている手続きが必要になります。この手続きを怠ると、最悪の場合差し止めの措置がなされる場合もあるので注意が必要です。

したがって、特に緊急性が高い場合は、エクイティファイナンスは適した手段ではない可能性があります。手続きにはある程度の時間がかかりますし、リスク対策などほかにも取るべき行動はいくつかあるので、エクイティファイナンスでは資金調達までにかかる「時間」も意識するようにしましょう。

もし「間に合わない…」と感じたら、デットファイナンスに切り替えるのもひとつの手段です。デットファイナンスにもデメリットやリスクはありますが、利用する金融機関によっては即日で融資を受けられるでしょう。

■エクイティファイナンスで資金調達を成功させるコツは?

エクイティファイナンスを検討している方に資金調達を成功させるコツを3つ解説します。

  1. 利益の拡大が見込めるか検討する
  2. 持ち株比率を考慮する
  3. 会社の成長に繋がるときだけ実行する

資金調達を始める前に確認して、状況次第でデットファイナンスに切り替えることも検討しましょう。順番に解説します。

【エクイティファイナンス成功のコツ その1】利益の拡大が見込めるか検討する

エクイティファイナンスでは株式を増やすため、利益が伸びなければ株価が下がってしまいます。株価にともなって、資金が下がり決算にも影響してくるので、利益が拡大する可能性が高い場合に利用しましょう。

成功するかわからない投資にエクイティファイナンスを使ってしまうのは、リスクを伴います。時期尚早なので、デットファイナンスでの資金調達を検討したほうが良いでしょう。

【エクイティファイナンス成功のコツ その2】持ち株比率を考慮する

エクイティファイナンスは、選ぶ方法次第で持ち株比率が変わります。比率が大きく変わると会社の経営権のバランスを維持できません。株主構成がどうなるか考えた上で、新株発行の比率を検討する必要があります。

一方で株主構成が変わる場合、既存の株主への十分な説明がもとめられます。経営の自由度にも影響するため、新株をどのような比率で配分するか考慮して方法を決めましょう。

【エクイティファイナンス成功のコツ その3】会社の成長に繋がるときだけ実行する

エクイティファイナンスは企業側には利点が多い一方で、既存株主のメリットが薄く負担をかける方法です。エクイティファイナンスを乱発すると、株主からの信頼を失う原因になるため、使いどころを考えましょう。

会社の成長につながるタイミングだと株主が納得する理由があるときに、利用するのがおすすめです。エクイティファイナンスを実行するタイミングを見極め、切り札として使いましょう。

■まとめ

デットファイナンス・エクイティファイナンスのどちらを選ぶべきかについては、企業の経営状況や時期、各株主の性格などによって変わってきます。最適な手段を選ぶためには、事前の情報収集や分析が欠かせません。

時間に追われて安易に手段を選ぶと失敗しかねないので、本格的な資金不足に直面する前に行動を始めるようにしましょう。

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