保育士の2人に1人が利用する保育や遊びのプラットフォームHoiClue(ほいくる)の運営を通して、子ども に寛容な社会づくりを目指したい 株式会社キッズカラー 代表取締役 雨宮みなみ様
公開日:2019/3/27 | 最終更新日:2019/3/27

HoiClue(ほいくる)は、子どもと一緒に楽しめる遊びのレシピや、保育や子育てに関する情報を配信するポータルサイトです。保育に関する情報を1つのアイディアとして提案する事にこだわりを持って発信を行っている他、保育園・幼稚園の先生など、子どもに関わる人たちの遊びのアイディア写真も共有できる場として、少しずつその輪を広げています。
保育情報の入手が困難だった頃に抱いた課題感を元にこのサイト制作をスタートし、共感して集まる保育に関わるユーザーと共に、子どもに対して寛容な社会づくりを目指している、元保育士でもある株式会社キッズカラー 代表取締役 雨宮みなみ様に、保育士から起業に至った経緯や、起業に対する思いをお聞きしました。
起業までの経緯をお聞かせください。

学校を卒業後、保育士として6年間勤務をしていました。その当時、保育関連の情報を得る手段が少なく「もっと簡単に知識を得る事ができれば…」と思った事が起業のきっかけです。
子どもは身近に起きる様々な事を吸収して成長するため、狭い視野や価値観で触れ合うと、子ども達が吸収できる事もそれに伴い限られてしまいます。なので、保育士自身がさまざまな体験や、インプットを行い成長していくことの大切さを常に感じていました。でも、当時は特に情報源が限られてしまっていた事と、保育士の労働環境の厳しさから、意識はあるのに実行が難しいというジレンマに悩むと同時に、もっと気軽に知見を広げる事はできないのか。と考える様にもなっていました。
そんな悩みを抱えていた時、エンジニアをしているパートナーが、「インターネットを通して保育に関しての情報を共有できる場を作ってみてはどうか。」と提案をしてくました。それがきっかけで、2010年に「HoiClue(ほいくる)」の運営を開始する事になりました。
保育士から起業する事への不安や、大変だった事はありますか。

「あったらいいな。をカタチにしてみよう」という気持ちで始めたので、起業をする時の不安は比較的なかったのですが、スタートしてみて向かい合う壁は多かったですね。
例えば、だんだんと外部の人との関わりも広がっていくわけですが、保育士としてのキャリアしかなかった私は、ビジネスの場での振る舞いが分らず困惑する事がありました。名刺を持ったことすらなかったので、人の振る舞いを見てビジネスマナーを学んだり、メールの書き方やプレゼン資料の作り方、事業計画の作り方などを試行錯誤しながら実戦で学んだりしていきました。
もちろんWEBに関しての知識も無く、PC操作も書類作成程度しか行った事がありません。そんなスタート地点でしたが、構想があったので「踏み出したからには、やれるところまでやる!」という強い思いで進めていきました。
HoiClue(ほいくる)というサイトはどの様に作り上げていったのでしょうか?

保育や子育てが広がる“遊び”と“学び”のプラットフォーム ほいくる
まず、何から作ってしていこうか…と考えた結果「遊び」の情報をメディア化していく事にしました。
保育士の経験年数がけっして長くない私でも、たくさんのアイディアを持ち合わせていて、さらには「答え」がないので、先無限に広がる可能性を持っているなと思いました。世の保育士さんのアイディアや遊びの引き出しを共有することができたら、ものすごい遊びの世界が広がるぞ!と。そして結果的に、子どもたちが過ごす環境も少しずつ広がっていくのではないか…と。
例えば「鬼ごっこ」という遊び1つでもいろいろな種類が有る様に、「遊び」は環境や場所や材料によって全然違っていて、答えが無く十色にあります。まずは、自分にとって「当たり前」に知っている遊び方を書き出して整理していく作業を行い、順次発信をして情報量を増やしていく事で、「こういう遊びも有るよ!」という声が集まって来る場に広がっていくのではないか。と思い、まずはひたすらコンテンツを増やしていく事に注力していきました。
HoiClue(ほいくる)で発信をしていく事でどの様な変化がありましたか
掲載を継続する事で、保育に関わる方からの声が実際に集まる様になりましたが、「ハロウィンの時期に3歳児と一緒に何を作ったらいいのか」というような具体的な質問も多く「現場で必要を迫られている内容」を求められる事が増えていきました。
ほいくるでの掲載内容はあくまでも「きっかけ」であって「答え」ではないんですよね。だから、子どもたちと何をしたら良いかは、目の前の子どもたちが今どんなことに関心があるのか、その姿について良く知っている保育士さん自身が一番知っているはずです。そこに対して何か具体的なアイディアを提供することは、本当にやりたかったことなのだろうか…という葛藤が生じてくるようになりました。
「ユーザーの希望にどこまで沿っていくかの課題感」を抱えている際、知人に「人は基本を持っていないと、はみ出る事もできないのでは」という言葉をかけてもらい、まずは求められるものに対して答える事も必要だという思考を持ちながら、自分の中での基準を設けて「軸はブラさずバランスを保ちながら掲載をしていく」という運営を行う様にしていきました。
その後はどの様に事業を広げていったのでしょうか。
最初はかけもちで仕事をしていましたが、少しずつユーザーも増えて来た段階で、事業として中途半端ではなく「これ一本で食べていく!」という決意をしました。
「やってみよう。形にしてみた。」という段階から次のステップを模索していく中で、ベンチャーキャピタルの方と会う機会があり、先々の構想も具体的に描く事ができた事もきっかけで、出資を受ける事になりました。その後、まずはプラットフォームとして成長させる事。より多くの人が集まる場にしていく事に注力しました。この時点で、もともと理想としていた「保育士の意見やアイディアを交換し合う参加型サイト」という形にできていなかったので、2015年に「ほいくる」のアプリをリリースし、保育士自身が写真を通してアイディアを共有できる場づくりの一歩を踏み出しました。
また、自分たち自身も常に「子どもについての学びを深めたい」という思いから、オフィスを開放し「コドモガラクタラボ」という自由に物作りができる場の運営もスタートしました。このラボは、子どもが自由に製作を行えるだけではなく、親御さんが子どもの成長に向き合える場としても評価をいただいています。
出資を受けたタイミングをきっかけに、やってみたい事をどんどん広げる加速度が増したのではないかと思っています。
事業を行う上で重要なことは何でしょうか。

自分たちが実現したいことを、「いかにおもしろがりながら」追求し続けられるかが重要だと思います。
実現したいことに向き合うなかで、出会う迷いや悩みはたくさんあるし、うまくいかないことだらけですが、それも含めた上で、「いかにおもしろがれるか」が追求を続けられる環境につながるのだと思います。
また、きちんと売上を作ることも重要です。価値を感じるからこそ対価を払う人がいるので、きちんと収益化がされるまでは自己満足だと思っています。ニーズと実現したい事のバランスを保ちながらどうやって新たな価値を生み出していくかは、常に考えています。
今後の展望をお聞かせください。
まず、2018年に株式会社小学館と資本 業務提携を行った事で、今まで「遊び」に着目していたところの背景にある、より専門的な部分まで深く掘り下げ、子どもの発言や行動を大人が理解できるような情報を新たに発信していこうと思っています。
また、子どもがやってみたいという思うことを、大人も無理なく楽しめるようなアイディアの共有や場づくりをしたいと思っています。子どもがやりたくても、大人が躊躇してしまう様な遊びができる方法や場所をユーザーと共に考えていき、子どもに優しい社会、子どものやってみたいに対して寛容な社会を作っていきたいと思っています。
最後に、起業家の方にメッセージをお願いいたします。

起業と一言で言っても、個人でやるのか、法人化するのかなど、形はさまざまです。
どういう形が自分のやりたいことや事業プランに合っているのか、長期的な視点てじっくり考えることが、結果的に無理なくビジョンの実現につながるのではないかと思います。とはいえ、いくら考えても想定外のことは起こるものです。ご縁やタイミングに恵まれて今がある私ですが、個人的には、さまざまな局面を迎えた時に求められた事は、「覚悟」でした。何が「正解」かはやってみないとわからないので、ビジョンと共に覚悟を持って、自分が本当に大切にしていきたいものや具現化したい世界観に向けて、共にチャレンジを楽しんでいけたらと思います。
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