医師と医療機関、医師と人々などをつなぐプラットホームを提供し、健やかな社会づくりに貢献する、MRT株式会社/馬場稔正社長

公開日:2017/5/17  |  最終更新日:2017/6/7

まずは自己紹介からお願いします。

MRT株式会社(創業時は有限会社メディカルリサーチアンドテクノロジー)は、東京大学医学部附属病院に所属する医師の皆さんの互助組織からスタートした、東大医学部発の医療ベンチャーです。その一員だった冨田兵衛先生(医師/現MRT会長)とともに法人化し、互助の精神をシステム化して、医師と医療機関とをつなぐ役割を担ったのが当社です。

医師が足りていない病院が募集を出し、そこに空き時間のある医師が応募し勤務に向かいます。90%以上が口コミで広がり、東大卒医師の約3人に1人が会員に。多いときは1日に500人以上をマッチングする日本最大級のシェアを誇る医師人材紹介会社に成長しています。

インターネットを活用して医師と医療機関をつなぐサービス(Gaikin、careerなど)からスタートした当社は、今では医師のネットワークや生きた情報を持っていることを強みにサービスを発展させて、医師と大学の医局とをつなぐサービス「ネット医局」に加え、医師と患者さんとをダイレクトにつなぐサービス「ポケットドクター」を展開。

スマホやタブレットにアプリをインストールすることで遠隔診療・健康相談を受けられる「ポケットドクター」は日本初の試みであり、経済産業省主催の「ジャパン・ヘルスケアビジネスコンテスト2016」でグランプリを受賞しました。熊本地震の際に急遽リリースした「ポケットドクター for 震災支援版」では、ボランティアの医師が125名集まり、テレビ電話で健康相談に対応しました。

貴社の役員には医師が多いですが、馬場社長ご自身はどういういきさつで関わったのですか。

私が医療に目覚めたのは、20歳のときの交通事故がきっかけなんです。記憶を失い、長期入院を余儀なくされました。生死を彷徨うほどの大事故であっただけに、自分の命を救ってくれた医療のありがたみを身に染みて感じ、次は自分が医療の道に進み貢献したいと感じるようになりました。そしていつか自分の病院をつくりたい、というのが私の夢になりました。

父の知人に紹介してもらい高木病院グループに就職し、その中でできることを精いっぱいやりました。そのうちに医師を取り巻くさまざまな事情がわかってきたんです。

そして出向先の病院で運命的な出会いをしたのが冨田兵衛先生です。「社会的意義のある、今までにないクリニックをつくりたい」という思いが一致し、「なぜ、病院に休みがあるのか」「(患者さんのことを考えたら)おかしいのでは?」と話が弾んで、コンビニのような休まないクリニックを立ち上げることにしたのです。MRTが2000年1月で、クリニック立ち上げが2000年10月でしたから、2つの事業が並行して進んでいったという感じです。

 

資金はどう調達しましたか。

今は資金調達の環境がいいので、何億円も集めてスタートする起業家もいますよね。すごいなと思いますが、私たちのスタイルは無理をせず、失敗しても致命傷にならない程度の金額で始める、ミニマムスタートを基本としています。クリニックは冨田先生の資金と多少の借入金で始めました。10坪くらいの小さな場所で、医師1人、受付1人でスタートしました。メディカルリサーチアンドテクノロジーも、医師3人と私の4人で創業。正社員を雇い始めたのは2004年からです。

クリニックの運営は今も行われているのでしょうか。

残念ながら、開院から3年ほどで手放しました。コンビニができて私たちの生活が便利になったように、病院もいけると思っていましたが、現在は院長をしていた冨田先生が透析センターを運営しています。医師のネットワークを活用し、多くのクリニックが休診している時間帯(午前、午後の合間、夜間、日曜日)も受診できる患者さん思いのクリニックを開業して、その後も各所にクリニックを増やしていくつもりでしたが、そうはいきませんでした。夜間や日曜日に通院する患者さんが思いのほか少なかったのです。患者さんに話を聞くと、「院長に診察してもらいたい」「日曜は通院に使いたくない」という声が多く、本当に具合が悪くならないと需要がないことがわかりました。

その一方、MRT(メディカルリサーチアンドテクノロジー)の医師紹介累計実績は順調に伸びて、2007年には10万件を、2013年には50万件を超えて、100万件突破も見えてきました。成果報酬で手数料をいただいているので、実績数が増えれば売り上げも伸びます。おかげさまで、2014年には東証マザーズ上場を果たすことができました。

馬場さんは2010年に社長になったのですね。

医師3人と私の4人で法人化したものの、皆さん医師としての本業がありますから、事業の運営は私が担っていました。とはいえ私も、もともと病院を増やしたいという思いが強く、他の事業にも取り組んでいました。

実務は社員に任せることが多くなっていく中で、医師の時間をシェアリングするサービスは競合がなく、会社は想像以上に大きくなっていきました。社員のモチベーションを上げるために、利益の10%をボーナスに還元したりと我流の経営を行っており、先を見据えて私はMBAを取りました。

2010年に社長になってからは、海外でもトップクラスの成功事例を参考に、座学で学んだMBAの経営学を実践に取り入れて、コスト面を中心に改善を図っています。私のエネルギーになったのは、実務に励んでいた社員たちが、社長就任を機に「上場を目指して頑張りましょう」といってくれたことです。上場を果たした今は、日本一ではなく、世界一に挑戦し、「医師といえばMRT」といわれるような会社を目指しています。

MRTは無借金経営ですか。

そうです。資金を調達して、一気に事業拡大を図る方法もあると思いますが、私は屋久島の杉を見たときに、生育環境が悪い中でもあれだけ大きくなっていることに感動し、私たちの事業も地道にやることが大切だと思いました。今年は、遠隔診療・健康相談サービス「ポケットドクター」を普及させていかなければならないと、気を引き締めているところです。

経験を踏まえて、起業家に必要な要素を教えてください。

私は「病院をつくりたい」と思い一人で走りだしましたが、できることとできないことがあります。できないことをどうするかというと、昔話の「ももたろう」と同じように、仲間を集めることになります。そこで必要となるのが「志」です。私は新しいことを始めること、新しいものを創ること、そして育てることには社会的価値があると思っています。ですから「社会貢献」を軸に、正しいことをやると決めて、正しく行動することを心がけました。すると「ももたろう」がイヌ、サル、キジと巡り会ったように、サポートをしてくれる人が現れて、事業に必要な人、もの、お金、情報が集まりました。自分の体験を踏まえてお話しすると、起業家にもっとも必要な要素は「志」だと思います。これは事業を始めてからも非常に大切になります。うまくいけばいくほど本業をおろそかにし、違うことを考えてしまいがちなので、「志」を目に留まるところに掲げて、いつでも創業の思いや理念に立ち返ることができるようにしておくことが大切だと思います。

最後に起業家の皆さんへ、メッセージをお願いします。

「一日一生」という言葉がありますが、私は「一秒一生」、秒単位でそのときを楽しみながら全力投球しています。私は中学生まで小児ぜんそくで入退院を繰り返していたこともあり、人のことを気にしたり、将来を考えたりすることがありませんでした。その後に大きな事故を体験し、人はいつ死ぬかわからないと思ったこともあり、自社に対しても同じような考え方で、将来像を描くことがあまりありません。それよりも「今後、世の中はどうなっていくのか」ということを考えることのほうが大切だと思っています。医療でいえば厚生労働省のWebサイトなどにヒントがたくさん出ています。日本だけでなく世界も含めて世の中にアンテナを張り、マーケットをしっかり見ていくと、ものも人も資金もついてくると思います。

おもしろいことをやっている人がいると見に行きたくなりますよね。事業も同じで、成功の秘訣があるとすれば、マジシャンのようにおもしろいことをやり続けていくことだと思います。ネタが一つだと飽きられてしまいますし、マジックはタネがわかるとそういう見方をされるので、常に新しい仕掛けをつくっていかなければいけませんが、仕掛けをつくり続けることができれば、なにかはヒットするはずです。私は2000年に法人化し、一緒にやろうとなったときに、30くらいビジネスモデルを考えました。そのときに遠隔医療も考えていました。世の中に「あったらいいな」と思ったのです。ただ、世の中にテクノロジーがない時代でした。いつかそういう時代が来たら…というイメージを持ち、マーケットを見ながら、タイミングを計って、ズバリ時期を当てたのです。誰よりも先に記者会見を行い、市場をつくりました。経済産業省主催「ジャパン・ヘルスケアビジネスコンテスト2016」にてグランプリを受賞したこともあり、「ポケットドクター」は注目を集め、競合する企業がたくさん出てくるなど、遠隔医療のムーブメントを起こすことはできたと思います。

これからは予防医学、ヘルスケアなどの分野に興味がある優秀な人に入って来てほしいですね。予防医学、ヘルスケアが浸透すれば「病気が減る」⇒「医療費が減る」⇒「医師の負担も減る」からです。当社が持つ医師のリソースを、病気にならない世の中づくりに活かしていくことが使命であると感じています。

同時に、私の目標は、MRTを世界一“イケてる”会社にすることです。その一つとして、大学生にオフィスを開放しています。東大をはじめ慶応、早稲田などから優秀な学生が1年生から集まって来て、自分たちで仕組みを考えたり、創ったりしています。もちろん当社に就職しなくてもかまいません。おもしろくしたい、明るくしたい、楽しくしたい……。そういう思いをできることからカタチにしていく。そこに私の存在価値があると思っています。

 

 

貴重なお話、誠にありがとうございました。

MRT株式会社

https://medrt.co.jp/

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