自転車のリサイクル業を主軸に、サービス拡大に努める株式会社ちゃりカンパニー/久保田哲也取締役 兼 執行役Co-founder
公開日:2017/5/12 | 最終更新日:2017/5/12
まずは自己紹介からお願いします。
株式会社ちゃりカンパニーという自転車のリサイクル会社にかかわって4年目になります。
きっかけは、シンガポールの法人(投資系の事業会社)でディレクターをしていたときのこと。シンガポールでのディレクター職は、日本の社長職にあたり、サイン(日本でいう実印)をする権限を与えられていました。当時、知人の紹介で、「オーナーが資本金を出した事業を拡大させたい」と相談を受け、経営者とともに立ち上げを担うパートナーのようなかたちで参画することになりました。
参画にあたり、「1期目は報酬を受け取らない」ことを条件に引き受けたのですが、その理由は2つあります。1つは、経営者と同じ立場ならリスクを負うのが当然だからです。経営者はすでに資本金を出しているため、自分もなんらかのかたちでリスクテイクしたいと思いました。もう1つは、事業の成功フェーズが描けたことです。実際にスタートから4カ月で、月間仕入れ高が5倍以上になりました。この2つがあいまって、経営者との間に信頼が生まれ、「自転車のリサイクル事業で日本一を目指す」という目標も達成できました。
投資を始めたのはいつですか。
ちゃりカンパニーと出会ってからです。個人で投資をしている案件もあれば、会社で投資をしている案件もあります。投資は別会社(株式会社エフォーティスアンドカンパニー)で行っています。
僕は、投資を始めるまではずっと起業家寄りでした。経営者的な仕事を初めて経験したのは、19歳のときです。実は中卒でして、地元の進学校に進学したものの、「学校で学ぶことは自分でも学べる。自分の引き出しとして持っておく理由がわからない」と思い、退学しました。その後、生活費を稼ぐために中古車販売店に就職。当時、趣味だったスノーボードをアメリカで買い付けて、日本で販売を始めましたが、2年ほどでブームが去り、街のスノボショップで終わってしまいそうだったので、一度経営から離れることに。しかし好機に恵まれ、グループ企業の子会社を任されることになったのです。当時、若くして経営を学びたいという人が少なかったのも、選出の後押しになったと思います。
最終的に、さまざまな業種の取締役を5社ほど経験させてもらいました。そして26歳のときに起業。マネジメントの核となるマーケティングを柱に広告代理店を始めました。その会社は結婚式場を運営するまでに拡大しましたが、震災の影響で資金繰りが悪化し、やむなく地元の会社に従業員と取引先を守ることを条件に無償で事業を譲渡することに。会社の保証人になっていた私は自己破産しました。この失敗がなければ今の仕事に就くことはなかったと思います。
成功すると思った根拠を教えてください。
僕は、日本一になれない事業には直接手をつけません。でかい話に聞こえるかもしれませんが、日本で誰もやっていない事業であれば、その時点で日本一じゃないですか。ですので、日本一になれる事業か、という点はしっかり見極めています。
自転車のリサイクル市場には、圧倒的な事業者がいませんでした。1位の会社がたいしたことなければ、簡単に1位になれますよね。もともとちゃりカンパニーはリサイクル業で独立開業している企業なので、人材のリソースを持っていました。それなりの速度で成長できる土壌があったので、仕入れに力を入れれば3~5年以内に日本一になれる。将来上場の見込みも立つ。私の1年分の報酬という小さな額ですが、投資をしてやらせていただく価値があると思い、参画しました。
投資判断における見極めポイントを教えてください。
1. 事業の成長性
投資をさせていただく基準のようなものでいえば、僕はプロダクトと呼ばれる事業内容に関してはそれほどウエイトを置いていません。それは、いざとなったら自分が入って、これまでの経験を活かせると思っているところもあるのですが…。
事業をしようとしている社長、役員など、マネジメントにかかわるチームの能力が見極めるポイントになります。チームについては、足らない部分をうまく補い合えるメンバーかどうか。チーム全体としての力がどのくらいあるかを見て、判断しています。
2. 経営者の柔軟性
会社にとって成長することは大切なことですが、それ以前につぶさないことが大切です。ちゃりカンパニーの自転車リサイクルも、この先、どこまで拡大できるか、わかりません。市場規模400億円のうち、僕らのシェアが100億円くらいになると、そこから先は難しくなると思います。そうなったときにグローバルへ展開をしていくのか。第2、第3の事業を横につけていくのか。そういうことを考えなければいけません。会社を守るためには、適宜、他の事業に切り替えることができる柔軟性が必要なのです。
3. 事業に対するこだわり
事業に対するこだわりは、やろうとしているプロダクトへのこだわりではなく、事業に対するこだわりです。僕は震災以降、借金をしながら、自己資金で会社を回していました。その事業を維持していくには体力が必要だったので、結局事業を譲渡しましたが、この決断により今も事業は成り立っています。僕はそこが重要だと思うのです。自分が社長じゃないほうがいいと気づいたときに、社長を降りられるかどうか。つまり自分の地位や損得よりも、事業の継続や成長にこだわりを持って向き合っているかどうかということも、見なければいけないと思っています。
直近で、投資を行った事例を教えてください。
株式会社ペダルノートは、僕らが19%くらいの株式を持たせていただいています。僕も取締役というかたちで参加して、ハンズオンでさまざまなお手伝いをしています。同社とちゃりカンパニーは、スマートフォンアプリサービスで業務提携をしています。自転車にbeaconのアイコンを取り付けて、盗まれてもどこにあるか、わかるサービスです。もし自転車が見つからなくても、1万円の見舞金が出るよう保険会社と提携しています。自転車専門ではなかったサービスを、あえて自転車に振り切り、日本最大級のスポーツサイクル専門店、Y’sRoad(ワイズロード)と販売提携を行いました。
もう1つ、大手企業と提携しながら、次の資金調達を進めている会社があります。それは追加投資ではなく、ベンチャーキャピタルをご紹介しています。投資をした会社が、そこまで成長すると感慨深いです。
また、インキュベートオフィスという、投資先を支援するオフィスをつくる準備もしています。僕らの役割はベンチャー企業と大手企業とをつなぐこと。もともと大手企業が興味を持つ事業なら僕らは必要ありませんが、そうではない事業に対して僕らがいくつか足して、「これだったらつきあいたい」と思ってもらえるところまでもっていった上で紹介するというものです。
ベンチャー企業との接点はどのように持つのですか。
僕らの場合は紹介が多いです。地方にもよく足を運ぶので、そういうところでつながった企業もあります。「おもしろいことをやっているな」という企業には、こちらから声をかけています。相談レベルでも、専門的な知識が必要になった場合には、専門家(弁護士、会計士等)とのパートナーシップで対応させていただいています。ちょっとした相談なら無料で受けてくれると思います。このようにプロフェッショナルの人の意見を聞ける環境をつくることも、必要なことだと思っています。
ちゃりカンパニーの成長とともに、ベンチャーキャピタルを含めて金融系の方々との接点が増えました。その中で、国内のエコシステムの不足部分が見えてきており、「僕らの入り込む場所があるかもしれない」と思っています。この気づきにより僕の動き方も変わりました。社会的意義も含めて、小さい企業のスタートを支援する会社を増やさなければいけないと思っています。
世界全体のエコシステムでいえることだと思うのですが、今のベンチャー企業は投資をうけやすい環境になっています。IT革命の時と今とがすごく似ていて、大手企業がひっくり返されるようなモデルが作られる状況です。初期のIT革命では、例えばアマゾンや楽天が台頭し、物販において大手企業を食っていきました。これからは自動車にしても、家電にしても、大手が必ずしも強い時代ではなくなっていくでしょう。IoT、AIを活用し、大手企業では作れないものを中小企業が作る。そこに大きめのエコシステムが日本にも出来上がってきて、大きいベンチャーキャピタルが1つの製品に10億円規模の投資をしたら十分に大手と渡り合えます。ひっくり返す可能性もあります。そういう意味では、ベンチャー企業が投資を受けやすい環境にあるのです。とはいえ、スタートで支援をするところが少ない。日本が経済力のある国であり続けようと思ったら、そこを成長させるしかないと思っています。日本は100年以上続く企業が多い国。すごいことなのですが、年寄り企業が衰退しているのも事実。このままではアメリカ、イスラエルなどの若い企業にどんどん抜かれていくのが目に見えています。最近のニュースですが、テスラモータースの企業価値が一瞬ですがGMを抜いています。日本でも国内の若い企業が、老舗の企業を買収するような流れになっていかなければいけない。シャープがフォンハイに買われているようではいけないのです。
農業などの一次産業でもITを活用する時代。ちゃりカンパニーでもインターネットを使ったサービスの展開が重要課題です。買収ということではありませんが、ITに関しての投資は積極的に行っていく必要があると思っています。この会社に投資をしてくださる方は、自転車業界で成長していく企業だから投資をしようと考える方が少なくありません。そのお金を使わせてもらっている以上、自転車寄りのサービスを広げていくプランを軸に事業を広げていく必要があるので、「自転車」「EC」「リサイクル」をキーワードとし、駐輪場など、シェアリングサービスも含めた土地活用などにも、今後積極的に投資していきたいと思っています。
起業家の方へ、アドバイスをお願いします。
経営にしても人生にしてもバイオグラフがあります。下がるタイミングが必ずあるので、そこで終わるのか、再びバイオグラフが上昇するのを待って上がっていくのか。悩むときがあると思います。どんなに状況が悪くても、僕は、自分がマネジメント業をやめるという判断をしなければ、必ずまたやれる機会が与えられると思っています。そして次のチャレンジでは、少なくとも失敗する前の売り上げは取り戻せるはずです。その方法を知っているから。例えば、年商1億を経験した人が、次に年商1億を達成するには10分の1くらいの時間と労力で作れるのではないかと思います。運もあるので、それをつかみにいけるかということも重要ですが…。あきらめないでチャレンジし続けてください。
貴重なお話、誠にありがとうございました。
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