空きスペースの潜在的需要を感じて起業した「軒先」から、新たな街づくりや個人の起業の可能性を広げていく 軒先株式会社 代表取締役 西浦明子様
公開日:2019/7/31 | 最終更新日:2019/7/31
軒先株式会社 代表取締役 西浦明子様に起業ストーリーをうかがいました。
今でこそ「シェアリングサービス」は多くの人に知られていますが、他人と何かを共有する概念がまだ浸透していない2008年に、自身で始めようとした事業をきっかけに、気軽に利用できるスペースの潜在的な需要を感じとります。そこから西浦様がどのようにサービスを拡大していかれたのか、また、軒先から地域活性につなげる今後の構想についてもお話いただいています。
起業された理由をお聞かせください。
起業をする意識は元からあったわけではなく、出産後に家で子育てをしながら、自分の趣味と実益を兼ねたことができればいいと考えたのがきっかけでしたね。
出産のため当時勤めていた団体を退職したことを機に、以前駐在していた海外の国から雑貨を輸入し、ネットショップで販売してみようと考えました。とはいえ、当時は無料でネットショップができるサービスなどなく、固定費は毎月10万ほどかかる計算に…。これは子育て間の趣味では済まされない、売上の目処が立たないと厳しいと思い、テスト販売を行ったうえでやるかを判断しようと考えたんです。
まずはテスト販売のスペースや店舗を探したのですが、そもそも不動産屋さんの基本の契約形態は1年以上。短期での契約は行えるところは全くありません。
ただ、町中を見渡してみると、商品を陳列する程度の大きさのスペースは意外と多いんですよね。当時の私と同じように、ちょっとお店を開きたいとか、短期で何かやりたい方って、おそらく潜在的にいるだろうなと感じていたので、この理想を具現化してみようと思って、空きスペースを貸したい方と、使いたい方のマッチング行う「軒先ビジネス」を始めてみようと思いました。
ほかの誰かがサービス化する前に、自分でやってみたいという思いが強まったこともありましたね。
それからどのように構想していったのでしょうか。
当時の私は下調べをして市場性を検討することはほとんどせずに、すぐにサービス設計へ入ってしまったので、こういうウェブサービスをつくりたい概念(企画書)だけ作って、それをもとにサイト制作をしてくださる方を探したのが最初ですね。
その後、簡単なティザーサイトで「翌春からサービスを始めます」という予告を掲載しつつ、スペースを貸してくださる方を集める活動を並行しておこなっていました。
ただ、この間に「出産」という大イベントを迎えたので、私自身あまり動ける状態ではなかったため、夫を巻き込んで近所の商店街を回ってもらっていました。足を運んでドアをノックして直接交渉する地道な営業を繰り返しです。
そこから2008年4月に正式に「軒先ビジネス」をローンチ。構想開始から半年ほどだったでしょうか。その時は、7~8件の軒先スペースの掲載からのスタートでした。
当時の日本ではシェアをする思想が珍しかったので、大変だった事も多かったのでは?
特に不動産業界には保守的な方が多く、「何となく不安」と言われ、貸し出してもらえないことも多かったですね。
不動産って占有意識がすごく強いものなので、心理的なハードルがすごく高いのかなと思います。今では民泊がメジャーになりつつはありますが、まだ一部の方にかぎられていて、素性が知れない人に対して物を貸し借りすることへのハードルはまだまだ高い。
新しいことを自分がいの一番にやるということを嫌がる傾向はあるので、どんなに経済的合理性があったとしても、「何かあったらどうするんだ」「前例がないから」などの理由は多く聞きましたし、貸し出してもいいと言ってくださった場合も、何かあったら軒先ビジネスが責任を取るという条件付きでしたね。
新たな概念を受け入れてもらう事は想像以上の労力を費やしたのではないでしょうか。
そうですね。あくまで不動産オーナーさんにとっては分かりやすい「空いている不動産を有効活用しませんか」「収益化しませんか」の様なメッセージで開拓してはいましたが、新たな概念として受け入れてもらう、最初の扉を開けるところがすごく大変だったのだと思います。
ただ、実際に貸し出してみること、特に問題も起きないし、手間もなく収益化できる。魅力を感じてもらえて継続につながっていきました。
そのあとリーマンショックが起こり、意外にもこの出来事は軒先ビジネスにとっては追い風となります。リーマンショックの影響で、仕入れた不動産が塩漬け状態になって、わずかでも現金収入になるのであれば貸したいという会社さんからの登録が増えていったんです。そして、大きな物件の成約事例が出るようになって、それがはずみになっていきました。
それが軒先ビジネスリリースから1年後の2009年のこと。それまでは個人事業主としてやっていましたが、これからは大きな取引先も増えると感じ、このタイミングで法人化しました。
その後、駐車スペースのシェアサービス「軒先パーキング」の展開もされていますが、こちらはどのように創造されたのでしょうか。
一般住宅の空き駐車場は市場として新しくて、今までカウントされていないところだったので、とても可能性が広がると思いました。
軒先パーキングは、個人のオーナーさん中心のアプローチを軸としています。法人の場合はご提供いただける駐車スペースも大きいのですが、個人の方はだいたい1台分しか駐車場を持っていない。費用対効果が悪く見えがちですが、解約率がすごく低く人情味ある対応をして下さることも多いです。その上、一般住宅のスペースという新しいレイヤーを確保しておくことで、新しいサービス展開ができる可能性も広がります。例えば宅配ロッカーを置きますみたいなサービスとかは現実的ですよね。
営業効率は悪いことは事実ですが、実はその先に考えている事に通ずる部分が大きいんですよね。今は空き家が約800万戸あると言われていますが、現在の駐車場シェア以外にも、いろいろな街の空きスペースに新しい用途を与えることで、街づくりの一端を担いたいと考えています。そういった姿勢が、オーナーさんにとって他社との見え方の違いにもつながっているのではないでしょうか。
新しい用途を見出す事は地域の活性化にもつながりそうですね。
その街に住んでいる方が、その土地「ならでは」の魅力を伝える事ができないと、どこに行っても同じナショナルチェーン店しかない状態になって、街の魅力ってすごく半減してしまうと思んですよね。
個人が持っているユニークさとか、その街ならではのものを継承していくためには、不動産の部分でもリスクなく事業を始められて、かつ継続できるような仕組みはとても大切で、個人の方が起業しやすい街づくりをするっていうことが、街の魅力アップにつながるんだろうと思っています。なので、わたしは軒先から街づくりの一端を担っていきたいですね。
改めて、軒先株式会社提供サービスのご紹介をお願いいたします。
「軒先ビジネス」「軒先パーキング」「軒先レストラン」のスペースシェアのサービスを3つ展開しています。
軒先ビジネス - 貸しスペース予約サイト
軒先パーキング: 予約のできる駐車場
「軒先ビジネス」は、BtoBを中心とした場所の短期貸し出しを仲介するプラットフォームで、催事や販促が主な利用用途です。登録スペース数は2500、登録ユーザー数は4000社になりました。
「軒先パーキング」は駐車場シェアのプラットフォームで、登録スペース数は1万台分、登録会員数は32万人です。軒先レストラン - 飲食店を間借りしてシェアレストランはじめませんか?
2018年に吉野家ホールディングス様との共同事業という形で「軒先レストラン」をリリースしました。これは飲食店のシェアサービスで、現在は首都圏を中心に約240店舗の登録があります。今後、全国に拡大していく予定です。
ご経験を元に、起業するうえで大切なことは何でしょうか。
やりたいと思ったときに起業することです。
私の場合は、子育てがひと段落してから起業をする判断もできたかもしれませんが、もしそうしていたら、起業は一生しなかったと思います。やはり気持ちが最も高まっているときに始めなければ、そのうちに冷めてしまう。必ずしも大々的にやる必要はないので、小さくてもすぐに始めるということが、その後もモチベーションを維持するうえで大切だと考えています。
実は、子育てをしながら起業をするって、すごくおすすめなんですよ。育休などの制度が整っている会社はたくさんありますが、どこか後ろめたさを感じながら利用している人が多くいます。その点、起業をすれば自分の裁量で仕事ができるため、気持ちもすごく楽なんです。
起業して良かったと思うのは、月曜日の朝が辛くないこと。むしろ、月曜日が待ち遠しいですね。やはり自分のやりたい仕事ができているということが、常に気持ちを前に向かせるのだと思います。
今後の展望をお聞かせください。
2019年はラグビーワールドカップが、翌年はオリンピックが開催され、日本に多くの人が集まります。そういったときには駐車場や飲食店が不足するため、我々のようなシェアリングサービスを活用していただけるよう、浸透させていきたいと考えています。
また、今ある空きスペースに新たなサービスレイヤーを乗せていくことで、新しいサービスが生まれる可能性は大いにあると思うので、今後も引き続き「軒先○○」といった新サービスを考えていきたいですね。
起業家の方に向けて、メッセージをお願いします。
今はとても起業がしやすい環境です。起業に役立つウェブサービスがあり、お金を出してくれる人もたくさんいるので、何か事業プランがあり、遮るものが何もなければ、やらないのは損です。
起業は、年齢や立場に関係なく、いつでも誰でもできます。ITベンチャーだけが起業ではないし、シニアの方ももっと起業すればいいと思うほどです。働き方の選択肢の一つとして、起業がもっと定着していけばいいですね。
■軒先株式会社
軒先株式会社 - Nokisaki Inc. - 公式企業サイト
サービスサイト
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