【徹底解説】就業規則の変更に社員の同意・合意は必要?トラブル防止の5つの注意点と変更手順!労働基準法も説明!

登録日:2019.7.2  |  最終更新日:2025.3.13


就業規則のある会社は多いですが、内容が古くなり、会社の実態に合っていないこともあります。そんな時、すぐに就業規則を更新できれば良いのですが、そう簡単にはいきません。

間違った方法で就業規則を変更してしまい、裁判に発展する事例もあるからです。

そこで本記事では、就業規則の変更について、わかりやすくまとめました。

  • 就業規則の変更が必要となるのはどんな時?
  • 従業員が反対しても、就業規則は変更可能?
  • 就業規則変更に労働組合の意見は必要?
  • 就業規則変更の手順は法律で決まってる
  • 就業規則変更によるトラブルの対策や注意点は?

この記事を読むと、これらを簡単に解決できます。就業規則の変更でお悩みの方は、ぜひご覧ください。


就業規則の変更が必要になる2つの場面は『法改正』と『経営状況の悪化』


就業規則の変更が必要になるときは、主に以下の2つの場面です。

<就業規則の変更が必要な2つの場面>

  1. 法律の改正があった時
  2. 経営状況が悪化した時

それぞれの場面について、以下で解説していきます。

【就業規則の変更が必要になる場面1】法律の改正があった時

労働基準法などの法改正があると、就業規則も変更が必要になるケースがあります。法律よりも不利な内容の就業規則は無効となるためです。そのため、法令に合わせるか、法律以上の条件に変更します。

就業規則に関わる法律は多数ありますが、代表的なものには、以下のような法令があります。

<就業規則に関わる法律の一例>

  • 労働基準法
  • 労働契約法
  • 働き方改革関連法
  • 育児・介護休業法
  • 障害者雇用促進法
  • 最低賃金法

働き方改革関連法・労働基準法

働き方改革関連法の施行に伴い、2019年4月から「年5日以上の有給休暇消化の義務化」が始まりました。これにより、就業規則の変更が必要となった場合もあります。

最低賃金法

最低賃金は、毎年10月~11月に改定されるので、就業規則にも影響します。賃金体系の実態が、改定後の最低賃金を下回ってしまった場合は、就業規則を変更しなければなりません。

【就業規則の変更が必要になる場面2】経営状況が悪化した時

会社の経営が悪化し、賃金水準を下げる場合は、就業規則を変更する必要があります。ただし、この場合の変更は社員にとって不利益になるので、同意を得るなど、手順を踏んで手続きを行う必要があります。

詳しくは、本記事内の「就業規則変更に従業員の同意は必要?」をご覧ください。

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就業規則変更に従業員の同意は必要ない?条件次第で反対意見があっても変更可能!


「就業規則を変更するために、従業員の合意が必要かどうか」を判断する基準として、次の2つの法令があります。

<社員同意の必要性の判断基準>

  1. 労働基準法第90条:意見聴取&意見書提出で変更可能
  2. 労働契約法第9・10条:不利益の程度・合理性等により決定

それぞれの法律について、以下で解説していきます。

【労働基準法第90条】就業規則は意見聴取&意見書提出で変更可能

労働基準法にでは、就業規則を変更する際、従業員の同意は必要ないとされています。 つまり、反対意見があっても変更可能ということです。

これについて、以下のように記載されています。

(労働基準法 第90条1項より引用)
使用者は、就業規則の作成又は変更について、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならない。

(労働基準法 第90条2項より引用)
使用者は、前条の規定により届出をなすについて、前項の意見を記した書面を添付しなければならない。

上記の条文にある「意見を聴く」とは、「聴取する」ことであり「意見に沿う」という意味ではありません。また、「意見書」は「同意書」ではないので、賛成意見を書く必要はないのです。

この労働基準法第90条では、反対意見が出ても、その旨を記載した意見書を提出すれば、就業規則の変更が可能となっています。

【労働契約法第9・10条】不利益の程度・合理性等により就業規則変更の可否が決定

前述の労働基準法第90条では、従業員の同意は必要ないとされていますが、労働契約法にも、就業規則変更に関する定めがあります。

その中では「従業員の不利益となる就業規則変更を、合意なしにはできない」となっています。不利益な就業規則変更を同意なしで行うには、下記条件を満たす必要があります。

<従業員の同意なしに就業規則変更を行う条件>

  • 変更後の就業規則を社員に周知させる
  • 就業規則変更による不利益の程度に合理性がある
  • 就業規則の変更の必要性が合理的である

以下は、労働契約法の原文です。

(労働契約法 第9条より引用)
使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。ただし、次条の場合は、この限りでない。

(労働契約法 第10条より引用)
使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。

就業規則変更のトラブル防止策!5つのポイント・注意点を紹介!


就業規則の変更の際は、労働契約法に沿って同意を得るなど、トラブル防止策を講じた方が良いでしょう。

下記に、就業規則変更における5つの注意点・ポイントを紹介いたします。

<就業規則変更の5つのポイント・注意点>

  1. 従業員に同意書を書いてもらう(可能であれば全員
  2. 新入社員は入社書類と同時に同意書も記入してもらう
  3. 不利益な変更の必要性を説明する
  4. 説明した内容の記録を取る
  5. 従業員に不利益な変更は、経過措置を取る

それぞれのポイントについて、説明していきます。

【就業規則変更のポイント・注意点1】従業員全員に同意書を書いてもらう

同意書は、労働基準法上では必須ではありません。しかし、労働契約法においては、「合意なしに不利益な変更をできない」となっています。

つまり、合意があれば、不利益な変更も可能ということです。(詳しくは、本記事内の「就業規則変更に従業員の同意は必要ない?」をご参照ください。)

この同意書は、労働者の過半数の代表者だけではなく、社員1人1人に書いてもらいましょう。全員からの取得は無理でも、可能な限り多くの従業員に同意してもらうことが重要です。

ただし、くれぐれも同意書の記入を強要しないよう、気をつけましょう。

【就業規則変更のポイント・注意点2】新入社員は入社時に同意書をもらう

これから就業規則を変更するという時期に、社員を採用する場合、変更後の就業規則について、入社時点で同意を得ておきましょう。

入社書類を書いてもらう際に、同意書の記入もお願いするとスムーズです。

【就業規則変更のポイント・注意点3】不利益な変更の必要性を説明する

不利益な変更を一方的に押し付けると、トラブルに発展しやすいです。会社の現状などを説明し、なぜその変更が必要なのかを、社員へ充分に説明する必要があります。

【就業規則変更のポイント・注意点4】説明した内容の記録を取る

打ち合わせの際に、口頭で話をするだけでは、説明したという事実を証明できません。その場で説明内容を記録し、お互いにサインをして保管しておくなどの対策を取りましょう。複写式の記録用紙を使う方法もあります。

【就業規則変更のポイント・注意点5】不利益な変更は経過措置を取る

不利益な変更をする場合、急激に変えると、社員側にも負担がかかります。それが、トラブルの引き金となりかねません。すべてを一度に変えるのではなく、徐々に変えていくという、経過措置を取りましょう。

就業規則の変更手順・ステップ5つ+αを説明!


就業規則を変更する手順は、以下の5つ+αです。

<就業規則の変更手順・ステップ5つ+α>

  1. 就業規則変更案の作成
  2. 取締役会等で承認
  3. 労働組合で意見聴取
  4. 意見書の作成
  5. 就業規則変更届の作成・届出
  • その他:就業規則変更の周知

それぞれの手順について、以下で説明していきます。

【就業規則の変更手順1】就業規則変更案の作成

就業規則を変更する際に、最初に行うのは、変更案の作成です。総務部などの担当部署内で検討します。就業規則は、会社全体ではなく、支店ごとに変更が可能です。

【就業規則の変更手順2】取締役会等で承認

代表取締役等の経営陣から、就業規則の変更について、取締役会などで承認を得ます。

【就業規則の変更手順3】労働組合で意見聴取

就業規則変更にあたっては、意見聴取が義務付けられています。聴取する相手は、従業員の過半数の代表者です。

従業員の過半数が入る労働組合がある場合は、その代表者から意見聴取を行います。

以下は、労働基準法の内容です。意見聴取について記載されています。

(労働基準法 第90条1項より引用)
使用者は、就業規則の作成又は変更について、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者意見を聴かなければならない。

【就業規則の変更手順4】意見書の作成

聴取した意見をまとめて、意見書を作ります。 この書類は、意見聴取したことを証明するものです。意見が出なかった場合も、作成しないのではなく「特になし」と書きます。

これについて、労働基準法では、以下のように定められています。

(労働基準法 第90条2項より引用)
使用者は、前条の規定により届出をなすについて、前項の意見を記した書面を添付しなければならない。


【就業規則の変更手順5】就業規則変更届の作成・届出

就業規則変更届を作成し、以下の内容で提出します。

<就業規則変更届の提出方法>
提出期限就業規則変更後、遅滞なく(日数指定なし
提出方法窓口に直接持参
郵送
・電子申請(e-Gov)
提出先所轄の労働基準監督署
提出書類

【本社一括・事業所単体の届出共通】
・労働者代表の意見書(正本・写し:各1部)
・就業規則の変更内容(正本・写し:各1部)

【本社一括届出の場合のみ必要】
・事業所一覧(正本・写し:各1部)

【控えの返信希望の場合のみ必要】
・返信用封筒・切手

届出用紙の書式

【窓口持参・郵送の場合】
指定なし

【電子申請の場合】
・電子申請用の書式あり

届出用紙の書式は指定がないため、任意に作成が可能です。既存のフォーマットを使う場合は、厚生労働省のページからダウンロードできます。

なお、電子申請による提出のしかたを詳しく知りたい方は、厚生労働省のページもご参照ください。

【就業規則の変更手順:その他】就業規則変更の周知

変更した就業規則については、労働契約法第10条により従業員への周知が義務付けられています。

(労働契約法 第10条より引用)
使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、(中略)就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。

周知の方法は、労働基準法によって定められています。下記3つのうち、いずれか1つ以上を実施しなければなりません。

<就業規則変更の周知方法(いずれか1つ以上)>

  1. 各事務所の見やすい箇所に、常時掲示または設置
  2. 従業員へ書面で交付
  3. 規則を電子データ化し、常時閲覧可能なPC等各事務所に設置

(労働基準法施行規則 第106条1項、および 労働基準法施行規則 第52条の2 より引用)

コンピューター上で閲覧可能とする方法も、上記の法律で認められています。システム環境を整えておくと、早く伝えられるので便利ですね。

【数100万円の支払い命令!】就業規則変更によるトラブルとは?実際の裁判例を紹介!


就業規則変更において「社員に不利益となる変更は、同意なしにはできない」と、労働契約法第9・10条で定められています。

しかし「規則の変更に合理性さえあれば、同意なしに変更できる」とも受け取れる法令の内容です。(前述の「就業規則変更に従業員の同意は必要ない?」をご参照ください。)

そこで、就業規則の変更が原因となった、実際の裁判例を調べましたので、紹介いたします。

下記の判例では、就業規則変更の必要性が認められず、無効となりました。さらに、従業員から請求された数百万円の支払い命令も出ています。

【裁判の概要】

  • 「定年退職後の勤務延長者の給料を4割減額する」という就業規則の変更について提訴した裁判
  • 賃金等請求事件・債務不存在確認反訴請求事件(札幌地方裁判所:平成29年3月30日裁判)

【裁判所の判決】

  • 就業規則の変更は無効と判断し、被告人に数百万円の支払いを命じた

【裁判所の判決理由】

  • 経営状況が危機的状況とは認められない
    (直ちに運営資金が底をついたり、数年以内に破産するほどではない)
  • 従業員の不利益を緩和する経過措置・代償措置が講じられていない
  • 就業規則変更の必要性が合理的ではない
    (不利益を生じさせてまで変更することではない)
  • 以上の理由により、就業規則の変更は無効と判断した


 

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