発行可能株式総数とは?どうやって決める?何株まで?など会社設立時に知りたい3つのポイント!
登録日:2019.6.30 | 最終更新日:2019.9.24
会社を設立する際に定款を作成しなくてはなりませんが、定款の記載事項に「発行可能株式総数」の事項があります。
株式の数字に関して何かしら決めなくてはいけないことは推測できますが、聞きなじみがなければ何のことかよく分からないですよね。
また、発行可能株式総数について、多少知識があるかたでも、なぜ定款に記載しなくてはいけないのか、どうやって決めればいいのか分からないかたも多いのではないでしょうか?
そこで今回は、発行可能株式総数について以下の項目を解説します。
- 発行可能株式総数とは?
- 発行可能株式総数を決める理由
- 発行可能株式総数を決めるポイント
- 発行可能株式総数を決める手順
- 発行可能株式総数を変更するときの手順
発行可能株式総数について知識0という方でも問題ありません。簡単かつ短い時間でも読めるようにまとめましたので、是非参考にしてみてください!
発行可能株式総数とは
発行可能株式総数を簡単にいうと、会社が自由に発行できる株式の限度数のことです。発行可能株式総数は絶対的記載事項であるため、設立時には必ず定款に明記する必要があります。定款に明記した数以上の株式は発行できません。
発行可能株式総数のうち、まだ発行していない株式については取締役会の決議のみで発行可能です。株主総会を開く必要はありません。
一度決めた発行可能株式総数は容易に変更できません。もし、発行可能株式総数を超える数を発行したければ、株主総会の特別決議を開く必要があります。
ではなぜ、発行できる株式に制限を設けているのでしょうか?以下で理由を確認していきましょう。
発行可能株式総数を決める理由
発行株主総数を決めなくてはいけない理由は2つあります。
1つは株主を保護するため、もう1つは迅速に資金調達を行なうためです。それぞれ確認していきましょう。
【発行可能株式総数を決める理由1】株主を保護するため
なぜ、発行可能株式総数を決めると、株主を保護することに繋がるのでしょうか。ここには議決権と株主の利益が絡んでくるのですが、まだピンとこないと思います。そこで、発行できる株式を定めない場合をどうなるのか考えてみましょう。
仮に発行できる株式に上限がないと、取締役会が自由に株式を発行できてしまう状況になってしまいますよね。極端な話、既に100株が発行されているにもかかわらず、1万株を追加で発行できてしまいます。すると、1株あたりの価値は当然下がりますよね。
こうなると、不利益を被るのは発行前の100株をもっていた株主です。取締役会が勝手に株を発行したせいで、株の価値を下げられたのではたまったものではありません。
また、あらたに株が発行されることにより、経営の議決権にまで影響を与える可能性が考えられます。
例えば、既に100株発行している会社で、Aさんが株を60株保有しているとしましょう。このとき総株数の50%超をAさんが保有していることになるので、経営方針の議決権は実質Aさんが握っていることになります。株式会社では1株1票の投票権を持つからです。
しかし、発行可能株式総数の設定がなく、自由に株が発行できてしまうとどうなるでしょうか。さきほどと同じように、1万株を新たに発行してしまうと、発行済みの株式は合計1万100株となります。つまり、Aさんの保有する60株では会社の議決権を握れなくなってしましますよね。
このように、取締役会が自由に株式を発行できる環境があると、株主が不利になってしまいます。株式会社において、会社の所有者は経営を行なう取締役ではなく株主であるため、これはおかしな話ですよね。
そこで「発行可能株式で定めた数しか、僕らは発行しませんよ。そのとき1株は〇円ですよ」とあらかじめ定めておけば、株主は今後出回る可能性のある株式数を把握できます。仮に途中で発行可能株式総数を変更するにしても、株主総会を開く必要があるので、容易に変更できません。
理由の1つ目は、発行可能株式総数を設定することで、株主を守っていると覚えて貰えればOKです。
【発行可能株式総数を決める理由2】迅速に資金調達を行なうため
ここまで読んでいて「発行可能株式総数を決めなくても、毎回株式を発行するたびに株主総会を行なうっていうルールを設ければいいんじゃない?」と思った方もいるかもしれませんね。
確かに、株式を発行するたびに株主総会を開けば、取締役会は自由に株式を発行できません。株主の権利は守られるでしょう。しかし、株主総会を毎回開いてしまうと、今度は事業に影響を与えてしまいます。
株主総会を開くということは、その都度、株主との日程を調整して、総会のために時間を確保するということです。会社を存続させるためには他にもやらないといけないことがたくさんありますよね。たかが、と表現すると御幣があるかもしれませんが、株式の発行だけに時間をとるわけにはいきません。また、すぐにでも資金が必要な場合、悠長に株主総会を開いている時間がないかもしれませんよね。
発行可能株式総数によってあらかじ取締役会が自由に扱える株を定めておけば、株主総会を開く手間を省いて株式の発行ができます。つまり、迅速な調達が可能です。
まとめると、発行可能株式総数を決める理由は、株主と経営、双方の不都合をバランスよく解消するためだといえますね。
発行可能株式総数を決めるための3つのポイント
ここまでで、発行可能株式総数がどういったものなのかは理解していただけたと思います。しかし、具体的に何を考慮しながら数を決めてよいのか分からないですよね。
具体的には以下3点が、発行可能株式総数を決めるポイントです。
- 1株あたりの金額を決める
- 発起人全員の同意が必要
- 将来の増資も考慮して設定する
それぞれみていきましょう。
【発行可能株式総数ポイント1】1株あたりの金額を決める
発行可能株式総数を決めるには、まず1株あたりの金額を決めなくてはいけません。株式会社を設立する場合、発起人が最初の株式を受取るので、会社設立時に金額を決めることになります。
1株の値段に上限はないので、1株100万としてもよいですし、1株1円としてもよいです。だいたい1万~5万とする会社が多いですすね。基本的に高すぎず低すぎない値段に設定すればよいでしょう。
余りにも1株の金額が高いと出資者が限られますし、逆に低すぎると、管理が難しい上に、株主が多くなりすぎますからね。株券を発行するときの手間が増えてしまいます。
ここでは便宜上「1株の値段を決める」と表現していますが、厳密には「値段が決まる」と表現するのが正しいです。理由は、設立時の株式の取り扱いを見ればわかります。
例えば、発起人が資本金100万円を用意したとしましょう。次に決めるのは1株の金額ではなく、発行する株式数が先です。資本金100万に対して20株発行すると決めたのなら、自動的に1株5万円と決まります。仕組みの上では1株5万円と決めてから、20株発行すると決めるわけではありません。
つまり、1株の値段を自分の希望金額にするには、資本金と発行株数から逆算する必要があります。
いずれにせよ、1株がいくらになるかは会社設立後の資金調達に関るので、あらかじめ想定しておかなければなりません。
【発行可能株式総数ポイント2】将来の増資も考えて設定する
事業主によっては、将来的に株式発行による増資を見据えているかたもいるでしょう。しかし、いざ増資を行ないたいタイミングで、発行可能株式総数が足りなくなるということも考えられます。
発行可能株式数が足りないと、株主総会を開いて決議し、変更登記を行なう必要があります。手間と費用がかかるので、できれば避けたいですよね。そのために、あらかじめ多めに発行可能株式総数を決めておきましょう。
例えば、現在の資本金が100万円であり、将来的には1000万まで増資したいとします。このとき1株は1万円で取り扱われているとしましょう。
この場合、1000万の増資を行なうには、残り900株必要です。つまり、発行可能株式総数を1000株以上にしておけば、無駄な手続きを行なわずに増資が可能になります。
発行可能株式総数を決定する際は、将来増資を行なうか否かも検討しながら決定できるとよいですね。
なお、資金を調達して経営を安定させたいと考えている方は、Founderのマッチングサービスで投資家からの資金援助を受けてみてください。
【発行可能株式総数ポイント3】発起人全員の同意が必要
発行可能株式総数は設立登記を完了させるまでに発起人全員の同意が必要です。会社設立時の株主は発起人ですからね。発起人が1人であればそもそも話しあう相手がいないので、自分以外の発起人が居ない場合は気にする必要はありません。
公開会社か非公開会社かによって発行可能株式総数が変わる
会社は、株式の取り扱い方によって公開会社か非公開会社に分けられます。公開会社、非公開会社を分ける要因は株式譲渡制限を設けるか否か。株式譲渡制限を設けると、株式を自由に譲渡(売却)できない非公開会社として扱われます。逆に、自由に株式を譲渡可能な会社が公開会社です。
実は、公開会社であるか、非公開会社であるかによって発行可能株式総数が変わってきます。公開会社の場合、発行可能株式総数を発行済み株数の4倍超えにはできません。
例えば、会社設立時に20株を発行していた場合、発行可能株式総数は4倍の80株までとなります。
非公開会社であれば、発行可能株式総数に上限はありません。発行済み株式20株に対して、100株でも、1000株でも自由に設定できます。
このように、公開会社は発行済み株式の4倍までしか発行可能株式総数を設定できないことから、俗称「4倍ルール」と呼ばれています。中小企業の多くは、株に譲渡制限を設けていますから、適応されない事業主も多いでしょうね。株に制限を設けていない事業主のみ注意が必要です。
発行可能株式総数決定までの手順
次に発行可能株式総数はどのような手順で決定されるのかみていきます。
といっても、既に紹介されている内容が主なので、難しいことはありません。具体的には以下3つの手順で進めていきます。
- 発行可能株式総数を決定する
- 発起人の同意を得る
- 定款に記載・登記を行なう
それぞれ見ていきましょう。
【発行可能株式総数決定の手順1】総数を決定する
まずは、発行可能株式総数を決定しなければ何も始まりません。これまで説明してきた、ポイントをもとに決定していきましょう。将来的に増資を行なう必要がなく、特別な理由もなければ、1株1万~5万になるような株数に設定したほうが都合がよいです。
資本金100万であれば20株~100株のあいだで設定すればよいということですね。手間と費用がかかりますが、後から変更することもできます。
【発行可能株式総数決定の手順2】発起人の同意を得る
発行可能株式総数が決まれば、発起人の同意を得ていきます。過半数ではなく、発起人全員です。スムーズに決定するためにも、発起人全員で発行可能株式を決定すればOKです。
【発行可能株式総数決定の手順3】定款に記載・登記を行なう
最後に定款に発行可能株式総数について記載し、登記を行えば完了です。絶対的記載事項ではありますが、設立登記までに決めればOKなので、定款認証時に記載しておく必要はありません。
発行可能株式総数の変更方法
発行可能株式総数は会社を設立した後でも変更可能です。ただし、容易に変更できるものではなく、費用もかかります。できれば、変更がないように設定しておいた方がよいでしょう。
具体的には以下の手順で変更手続きを行います。
- 株主総会で特別決議を行なう
- 法務局で変更登記を行なう
それぞれ確認していきましょう。
株主総会で特別決議を行なう
発行可能株式総数を変更する場合株式総会を開きます。その際に開かれる総会は普通決議ではなく特別決議である点に注意しましょう。
特別決議による株主総会の場合は、全株主の半分が参加し、参加した株主の3分の2以上が賛成である必要があります。無事、株主からの賛成が集まれば次のステップです。
法務局で変更登記を行なう
株主総会によって株主からの合意がもらえれば、登記情報の変更を行います。設立の際は設立登記を行ないましたが、変更の際は変更登記になりますね。登記情報の変更には、登録免許税として3万円かかります。
また、変更登記には以下の3つが必要です
- 変更登記申請書
- 株主総会議事録
- 株主リスト
提出書類や更内容に問題がなければ変更登記完了です。以上で、発行可能株式総数の変更が終了します。


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